
税理士が開業で後悔しないために知っておきたい失敗事例と成功の秘訣
税理士として開業することは、大きなやりがいとチャンスがある一方で、「思い描いていた通りにいかず後悔した」という声も少なくありません。
本記事では、開業後によくある後悔の事例とその背景を整理し、開業前に知っておきたい準備や考え方について解説します。
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目次[非表示]
- 1.よくある開業の後悔とその原因
- 1.1. 顧客が集まらない
- 1.2.利益が出ない・価格設定を誤った
- 1.3.働き方の自由を期待しすぎた
- 2.開業で後悔しないためにやっておくべき準備
- 2.1.顧問先づくりは事前準備がカギ
- 2.2.サービスの内容と価格のバランスを整えておく
- 2.3.働き方・生活スタイルの見直しも忘れずに
- 3.後悔しない開業に向けて、できることから始めよう
よくある開業の後悔とその原因
開業後の後悔の多くは、理想と現実のギャップから生じます。
「開業すれば自然と顧問先が集まる」「自分のペースで自由に働ける」といった理想像を持っていても、現実はそう簡単ではありません。実際によくある後悔としては、「顧客が集まらない」「利益が出ない」「思ったほど自由に働けない」などが挙げられます。
顧客が集まらない
「開業すれば顧問先が自然に増えるだろう」「営業方法はよくわからないので、しばらく様子を見てから動こう」と考え、十分な集客準備をしないまま開業を迎えるケースはよく見られます。しかし、実際には問い合わせも来ないまま時間だけが過ぎ、思い描いた通りにいかず焦りや不安を感じることになります。
顧問契約がなかなか取れない状況が続けば、資金繰りも厳しくなり、事務所の継続自体が難しくなることもあります。
開業直後の税理士は、そもそも存在自体が知られていないため、ただ待っているだけでは顧客を獲得できません。既に実績のある事務所や積極的に集客している競合がいる場合、何も手を打たなければ埋もれてしまうのが現実です。
利益が出ない・価格設定を誤った
「まずは仕事を取りたい」という焦りから、顧問料を安く設定してしまうのも、開業後に多い後悔の一つです。開業直後は顧客が集まりにくい不安から、安さを売りにして差別化しようとするケースがよく見られます。
しかし、顧問料を低くしすぎると、業務量が増えても利益がほとんど残らず、自分やスタッフの負担ばかりが大きくなってしまいます。結果としてサービスの質が下がり、顧客の定着率にも悪影響が出ることがあります。
このような状況に陥る背景には、価格設定の根拠が曖昧なまま開業してしまうことが挙げられます。競合の料金にばかり目が向き、自分の強みや提供価値、業務範囲とのバランスを十分に考慮しないまま価格を決めてしまうのです。
特に月額顧問料は、契約後の値上げが難しく、値上げを試みても顧客離れのリスクがあります。そのため、「薄利多忙」な働き方から抜け出せなくなり、後悔につながりやすいポイントです。
働き方の自由を期待しすぎた
「独立すればもっと自由に働ける」と期待して開業する方も多いですが、これが後悔につながるケースも少なくありません。
実際には、顧客対応だけでなく、営業や事務作業、情報収集、経営判断など、事務所運営のあらゆる業務を自分で行う必要があり、思った以上に拘束時間が長くなることもあります。
特に、開業後の業務全体像を事前にイメージできていない場合、現実とのギャップが大きくなります。また、仕事とプライベートの境界が曖昧になりやすく、自宅兼事務所の場合は休むタイミングさえ分からなくなることもあります。さらに、家庭の事情(育児や介護など)が重なると、思い通りに時間を使えず、想定外のストレスを感じてしまうこともあります。
開業で後悔しないためにやっておくべき準備
開業後によくある「顧客が集まらない」「利益が出ない」「時間の自由が得られない」といった後悔は、開業前の準備次第で防ぐことができます。ここでは、税理士が開業で後悔しないために今からできる準備のポイントを解説します。
なお、freeeでは税理士の独立開業を目指す方に向けて、開業準備に必要な情報をまとめた「事務所開業ハンドブック」を提供しています。ぜひ参考にしてみてください。
顧問先づくりは事前準備がカギ
「顧客が集まらない」という後悔を防ぐには、開業前から集客の準備を始めることが大切です。人脈づくりは効果的な方法の一つで、知人や元同僚、経営者、他士業との関係づくりは開業前から意識して行いましょう。
また、WebサイトやSNSでの情報発信も今や必須です。ホームページやブログ、X(旧Twitter)、Instagram、Facebookなどを活用し、知ってもらう機会を増やすことが重要です。有料集客としてリスティング広告や税理士紹介サイトを利用する方法もあります。
こうした集客はすぐに成果が出るとは限らないため、できるだけ早く取り組み始めることが、後悔しない開業への近道です。
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サービスの内容と価格のバランスを整えておく
「利益が出ない」と後悔しないためには、顧問料の設定とサービス範囲のバランスを開業前に明確にしておくことが不可欠です。
価格設定は競合の相場だけを参考にするのではなく、自分の強みや業務の工数・時間も考慮して、無理のない持続可能な金額を決めましょう。
すべての顧客を一律料金で対応すると業務負担が大きくなり、採算が取れなくなることもあります。また、サービス範囲があいまいなまま契約すると、要求が多い顧客への対応で品質が下がるリスクも。
「この顧問料で何を、どれくらい提供するか」を明確にし、決算・申告料や年末調整、税務調査対応などはオプションにしたり、相続・事業承継、融資支援、コンサルティングなどは別メニュー化するのも有効な方法です。
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働き方・生活スタイルの見直しも忘れずに
「自由な働き方を期待したのに思うようにいかなかった」という後悔を防ぐには、開業前に仕事とプライベートのバランスを見直しておきましょう。
独立するとすべて自分で管理する必要があり、特に自宅を事務所にする場合は仕事とプライベートの境目が曖昧になりやすいです。
気づかないうちに休息のない生活となり、心身ともに疲れてしまうことも。
これを防ぐには、「何時まで働くか」「どこで仕事をするか」など、自分なりのルールを開業前に決めておくのが効果的です。
また、家族の理解や協力も大切です。自宅開業の場合は家事や業務の分担を工夫し、負担を軽減できる体制をつくりましょう。
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後悔しない開業に向けて、できることから始めよう
税理士としての開業は、自分の強みを活かしながら成長できる大きなチャンスです。その一歩を「こんなはずじゃなかった」という後悔にしないためには、理想だけでなく現実を見据えた準備が欠かせません。
「顧客が集まらない」「利益が出ない」「自由な働き方ができない」といったよくある後悔も、開業前からしっかり備えることで十分に防ぐことができます。もっとも大切なのは、後悔しないために今できることから一歩踏み出すことです。その行動が、後悔のない独立と、開業税理士として飛躍する未来につながります。
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