税理士が開業時に準備しておく運転資金 期間・項目・費用試算
税理士として独立開業を考える際には、初期費用に加えて、特に1年目は運転資金についても準備が必要です。
1年目は顧問先を年間を通じて増やしていく年となりますが、新規契約を締結しても年間報酬の全額がその年の売上に反映されない場合や、計画通りに顧問先が増えない可能性も考慮する必要があります。
そこで、少なくとも6ヶ月〜1年分の運転資金を準備しておくと安心です。本記事では、その前提で事務所賃貸、レンタルオフィス、自宅開業別の運転資金について解説します。
開業後に備えておくべき運転資金の種類と費用感
開業税理士が備えておくべき運転資金の種類は、実は税理士に限らず一般的な費用項目が主となります。それぞれの費用感については、以下の表にまとめています。なお、自身への報酬は費用に含めず、生活費は1ヶ月あたり25万円(※1)を基準としています。
※1:総務省統計局「家計調査 2023年の消費支出総世帯の平均」https://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/tsuki/index.html#nen
費用項 |
1ヶ月費用 |
事務所賃貸
(6ヶ月)
|
レンタルオフィス (6ヶ月) |
自宅
(6ヶ月)
|
---|---|---|---|---|
事務所賃貸料 |
0~15万円 |
60万円
(10坪程度:月10万円を想定)
|
30万円
(完全個室:月5万円を想定)
|
0円
(生活費に含む)
|
税務会計ソフト・その他ITツール |
2万円~ (システムにより異なる) |
12万円~ (システムにより異なる) |
||
広告宣伝費 |
5万円 |
30万円 |
||
水道光熱費 |
0~2万円 |
12万円 |
0円 (月額利用料に含む) |
0円 (生活費に含む) |
通信費 |
0~2万円 |
12万円 |
6万円 (インターネットは利用料に含む) |
0円 (生活費に含む) |
交通費などの雑費 |
3万円 |
18万円 |
||
生活費 |
25万円 |
150万円 |
||
合計 |
35~54万円 |
294万円 |
246万円 |
210万円 |
事務所賃貸か自宅開業かで6ヶ月間の運転資金については80万円程度の差があります。
それぞれの費目(生活費を除く)についても以下に補足していきます。
- 事務所賃貸料
- 事務所として賃貸オフィスを別途契約した場合に発生する費用となります。ここでは来客スペースも用意できる10坪程度のオフィスの賃料にて見積もっております。 地域や賃貸オフィスではなく、レンタルオフィス利用によって料金は変動します。
- 税務会計ソフト・その他IT
- 税務会計ソフトはオンプレミス型、クラウド型など導入するソフトや付帯するサポートや一緒に利用する関連ソフトによって大きく変わってきますので一概にいくらとは定義することが難しいです。 一方で、事務所運営上で必要となってくるITツールとしてGoogleWorkSpaceやMicrosoft Office、Web会議システムなどの月額利用料として月2万円〜からみておくと良いでしょう。
- 広告宣伝費
- 広告宣伝費の中で自社HPの管理費を1万円程度を想定しており、手軽に始められるリスティング広告費や見積比較サービス等、集客のための費用も含めております。 広告宣伝費ついては、目標とする売上に応じて費用が大きく変動する箇所にもなります。
- 特にリスティング広告などのデジタル広告を運用する際は中長期で効率化しながら継続した運用を行っていくことで成果に繋がる特性があるため、月額費用とは別に広告運用に関する学習コストもそれなりに発生することを念頭において置くとよいでしょう。
- 開業直後でも取り組みやすい営業手法については別記事「開業直後でも取り組みやすい税理士・会計事務所の営業手法とは?」でも紹介しているのでご覧ください。
- 水道光熱費
- 事務所賃貸時は水道光熱費が自宅とは別に発生するので、追加費用として計算しています。自宅開業の場合は、在宅ワークが増えることで費用が上昇する可能性が高いですが、ここでは生活費の中に含めるようにしております。 レンタルオフィスの場合、通常月額の利用料に水道光熱費は含まれるので0円としています。
- 通信費
- 通信費も水道光熱費と同様に事務所賃貸時は追加費用としています。自宅開業時は業務用のスマートフォン回線を追加する可能性もあるかもしれませんが、ここでは生活費の中で含めるようにしています。 レンタルオフィスではインターネット回線費は含まれているケースが多いですが、別途オフィス用の電話番号は取得する必要があるので、その分の費用のみ追加で想定しています。
- 交通費などの雑費
- 事務所賃貸時も自宅開業時も交通費・接待費・雑費は同様に発生すると想定して、事務所の形態に関わらず同額としております。
税理士の独立開業時に想定しておくべき運転資金のまとめ
税理士として独立開業を目指す際には、税理士会登録費用や入会費、事務所の契約金などの初期費用に加え、開業後に安定した収入を得られるまでの運転資金も確保しておくと安心です。
確保しておく運転資金の目安としては、開業時の顧問先数や見込み売上によって変動しますが、6ヶ月〜1年分を見込んでおくと良いでしょう。
また、事務所賃貸・レンタルオフィス・自宅開業の選択によっても大きく変動しますが、初期費用と同様に自宅開業やレンタルオフィスを活用することでコストを抑えることが可能です。
freeeでは税理士開業を目指す方のために初期費用やより詳細な運転資金などのコスト関連だけでなく、独立開業のすべてが分かる「事務所開業ハンドブック」を提供しております。ぜひ、こちらも参考にしてください。
その他の参考記事:「税理士が開業するときに必要な資金は?」