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税理士の登録区分3種類をわかりやすく解説|特徴と働き方の違い


目次[非表示]

  1. 1.税理士は登録区分によって働き方が異なる
  2. 2.開業税理士の特徴と働き方
    1. 2.1.すべて一人で決められる!自由度の高い税理士
    2. 2.2.営業や経営が必要に
  3. 3.社員税理士の特徴と働き方
    1. 3.1.共同経営者として経営に挑戦できる
    2. 3.2.他の区分の税理士にないハードルも
  4. 4.所属税理士の特徴と働き方
    1. 4.1.開業せず税理士になれる
    2. 4.2.自らの責任で業務もできる
  5. 5.3つの登録区分の違いを比較
  6. 6.目指す働き方に合わせた登録区分の選び方
    1. 6.1.独立志向が強く、自分の裁量で働きたい人:開業税理士
    2. 6.2.経営に関与しつつ、組織での安定も求めたい人:社員税理士
    3. 6.3.安定した環境で実務経験を積みたい人:所属税理士
  7. 7.税理士の登録区分を理解して、キャリアの選択肢を広げよう

税理士は登録区分によって働き方が異なる

税理士になるには、税理士登録を行う必要がありますが、その際には、税理士としての働き方に応じて「開業税理士」「社員税理士」「所属税理士」の3つの区分のいずれかを選び、登録しなければならないことをご存知でしょうか。

3つの区分は、その働き方に明確な違いがあります。組織での立場や責任、業務の自由度、報酬の面などにおいて、それぞれに異なる特徴があるのです。税理士会に「変更登録申請書」を提出することで後から別の区分に変更することもできます。(※1)
それでは、それぞれの区分の特徴や他の区分との違い、どのような働き方ができるのかを詳しく見ていきます。

(※1)登録区分・事務所等所在地の変更の場合|変更|手続・届出・証明について|税理士の方へ|東京税理士会

https://www.tokyozeirishikai.or.jp/tax_accountant/certify/change/contents/

関連記事:「 開業時に必要な税理士登録の変更手続きとは

開業税理士の特徴と働き方

開業税理士とは、自ら個人事務所を開設して活躍する税理士です。税理士として開業することを目指す場合、この区分を目指すことになります。

すべて一人で決められる!自由度の高い税理士

開業税理士の最大の魅力は、経営方針や業務範囲、顧客の選定などを自分自身の判断で決められる自由度の高さです。得意な分野や特定の業種に特化したり、コンサルティングなど税務以外のサービスに力を入れることもできます。また、顧客からの報酬がそのまま自身の収入となるため、頑張り次第で勤務時代より高収入を得ることも可能です。

さらに、「一人税理士」として自宅などで小規模に開業したり、多くの従業員を抱えて事務所のマネジメントにも取り組むなど、自分の希望やライフスタイルに合わせて働き方を選べる点も特徴です。

営業や経営が必要に

一方で、開業税理士は事務所運営や経営のすべてを自分で管理する必要があります。新規顧客の集客、事業計画の策定、資金管理、人材採用・育成など、独立前には必要のなかった経営面の知識も求められます。また、顧客との契約やトラブルなどの責任も原則として自分自身が負うことになります。

このため、開業税理士として安定したサービスを提供し続けるには、経営戦略を立てて実行する力や、事務所運営の体制づくりが重要となります。

関連記事:「税理士開業時の事務所は? 自宅開業、賃貸、レンタルオフィスのメリット・デメリット
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社員税理士の特徴と働き方

税理士法により、2名以上の税理士で「税理士法人」を設立し、組織的に業務を行うことが認められています。(※2)社員税理士は、税理士法人の経営を担う役員にあたる立場で、「社員」という名称ですが従業員ではなく、会社の取締役に近い役割です。個人で事務所を経営する開業税理士とは異なり、税理士法人の経営陣として働くのが社員税理士の特徴です。

(※2)税理士法第四十八条の二(税理士法 | e-Gov 法令検索)
​​​​​​​https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC1000000237#Mp-Ch_5_2-At_48_2

共同経営者として経営に挑戦できる

社員税理士は、他の社員税理士と共同で税理士法人を経営できる点が魅力です。
個人の税理士では複数の事務所を持つことは制限されますが、税理士法人なら支店展開が可能なため、仲間と個人事務所を統合して大規模な事業展開を目指すこともできます。

また、社員税理士には基本的に毎月定額の役員報酬が法人から支払われます。比較的裁量のある立場でありながら安定した報酬も得やすく、自由と責任のバランスが取れた働き方が実現しやすいのも特徴です。

他の区分の税理士にないハードルも

社員税理士になるには、他の社員税理士の承認や税理士法人への出資が必要です。出資は金銭だけでなく、労務や信用などでも認められるため要件自体は厳しくありませんが、他区分にはない手続きがある点には注意しましょう。(※3) また、競業禁止規定により、個人で税理士業務を行ったり、他法人の社員を兼ねることはできません。(※4) さらに、税理士法人の対外的な責任は社員全員が無限連帯責任を負うため、社員税理士になる際はこうした点を十分に理解したうえで判断する必要があります。
(※3)税理士法第四十八条の八(税理士法 | e-Gov 法令検索)
https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC1000000237#Mp-Ch_5_2-At_48_8
(※4)税理士法第四十八条の十四(税理士法 | e-Gov 法令検索)
https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC1000000237#Mp-Ch_5_2-At_48_14

所属税理士の特徴と働き方

所属税理士は、税理士法人や個人事務所に雇用されて働く税理士で、いわゆる「勤務税理士」とも呼ばれます。自ら開業せず、税理士法人や開業税理士の補助者として業務に携わるのが特徴です

開業せず税理士になれる

所属税理士の魅力は、独立開業せずに税理士業務の経験を積める点にあります。勤務先の方針に従いながら、税務相談や申告書作成、税務調査対応など幅広い業務に専念できます。収入は労働契約による給与となり、経営責任のある税理士より高額ではない場合が多いものの、スタッフや未登録の有資格者よりは高待遇です。経営に直接関わることなく、税理士としての実務を積みたい方や安定志向の方に向いた区分です。

自らの責任で業務もできる

所属税理士は、勤務先から書面による承諾を得ることにより、顧客からの税理士業務の依頼を直接受け、自らの責任においてその業務を遂行することもできます。つまり、勤務先の考え方や信頼関係の深さによっては、所属税理士であっても、ある程度の裁量権を持って顧客に接することができるのです。

一方、自らの責任で遂行した税理士業務の対外的な責任は、その所属税理士にあります。顧客に損害を与えた時は賠償責任を負う可能性もゼロではないため、必要な注意を払い、責任を持って業務に取り組まなければなりません。経営責任を負うことはなくとも、自ら行う税理士業務に対する責任は生じるのです。

3つの登録区分の違いを比較

ここまで見てきたとおり、「開業税理士」「社員税理士」「所属税理士」には、それぞれ異なる特徴と働き方があります。

以下の表は、開業税理士・社員税理士・所属税理士の違いをまとめたものです。

細かい部分では例外もありますが、ご自身の志向や理想の働き方に合った登録区分を選ぶ際の参考にしてください。


開業税理士

社員税理士

所属税理士

働き方

自ら個人事務所を運営
税理士業務も事務所経営もすべて担う

共同経営者として税理士法人の経営に参画

開業税理士や税理士法人の補助で税理士業務を遂行

業務の自由度

高い

やや高い

低い
(限定的にはあり)

責任範囲

全面的に無限責任を負う

社員全員による無限連帯責任を負う

自らの税理士業務に責任あり

報酬

事業所得
(報酬-経費のすべてが手取りとなる)

給与所得(役員報酬)

給与所得
(労働契約に基づく給与)

リスク・裁量の程度

リスク・裁量ともに最大

リスクは高いが裁量は組織内で調整される

リスクは少なめ、裁量も少なめ

 
​​​​​​​関連記事:「 所属税理士と開業税理士の1日のスケジュールと仕事内容の違い

目指す働き方に合わせた登録区分の選び方

先ほどの比較表では、各登録区分の違いを全体的に整理しましたが、ここでは「どんな人にどの区分が向いているか」をより具体的に解説します。自身の志向や将来像と照らし合わせながら、適した道を検討してみてください。

独立志向が強く、自分の裁量で働きたい人:開業税理士

自分の裁量で業務範囲や働き方を決めたい方、自らの名と責任で顧客と向き合いたい方には、開業税理士が向いています。集客や経営の責任もすべて自分で担う必要がありますが、その分、自由度と収入の伸びしろも最大です。

経営に関与しつつ、組織での安定も求めたい人:社員税理士

個人ではなく仲間と共に事務所を運営したい方、あるいは組織の中でリーダーシップを発揮したい方には社員税理士が適しています。経営への参画と安定した役員報酬を両立できることが特徴です。

安定した環境で実務経験を積みたい人:所属税理士

とりあえず税理士としての実務経験を積みたい方、独立よりも安定した働き方を求める方には、所属税理士がおすすめです。経営リスクを直接的に負うことなく、税理士業務に集中できる環境でキャリアを築くことができます。

税理士の登録区分を理解して、キャリアの選択肢を広げよう

税理士には、「開業税理士」「社員税理士」「所属税理士」という3つの登録区分があり、それぞれ働き方や役割が大きく異なります。この違いを正しく理解しておくことは、税理士としてのキャリアプランを描くうえで非常に重要です。

将来的にどのような立場で働きたいのか、どのような専門性を高めたいのかを意識しながら、自身に合った登録区分を今から考えておくことで、より充実したキャリアを築くことができるでしょう。

また、freeeでは税理士の独立開業を目指す方に向けて、開業準備に必要な情報をまとめた「事務所開業ハンドブック」を提供しています。独立を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。



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