所属税理士と開業税理士の1日のスケジュールと仕事内容の違い
将来的に税理士として開業を目指している方の中には、所属税理士と開業税理士の具体的な業務内容や1日の流れの違いがイメージしづらいという方も多いのではないでしょうか。
税理士は、企業や個人の税務・会計を支える専門職であり、登録区分として開業税理士、社員税理士、所属税理士に分かれます。
本記事では、その中でも税理士事務所や税理士法人に雇用されて働く「所属税理士」と自ら事務所を開設して働く「開業税理士」の代表的な仕事内容に加え、それぞれの1日のスケジュール例、さらに1年を通じた主な業務スケジュールについても紹介します。
将来の働き方を具体的にイメージする参考にしてみてください。
目次[非表示]
税理士の仕事内容
税理士は、税務の専門家として、企業や個人の経営を税務・会計の面から支える職業です。
なかでも、税理士には「独占業務」があり、法律上はこれが税理士の仕事の中核を成しています。独占業務は、次の3つです。
- 税務代理:納税者に代わって、税務署など対する申告や申請などの手続きを行う業務
- 税務書類の作成:確定申告書など税務署などに提出する税務書類を作成する業務
- 税務相談:依頼者の相談に基づき、専門家として具体的なアドバイスを行う業務
さらに実務では、記帳代行や決算書の作成、資金繰り支援、相続・事業承継の相談など、経営や人生に深く関わる幅広い業務を行います。最近では、クラウド会計ソフトの導入支援や業務効率化の提案を行う税理士も増えています。
税理士は、単なる税務の専門家にとどまらず、経営者の悩みに寄り添う“経営のパートナー”として、企業の課題解決を支える存在です。
関連記事:「 税理士の独占業務とは|業務内容や違反リスクを解説 」
税理士の1日のスケジュール
ここでは、税理士として働くうえでの2つの代表的なスタイル「所属税理士」、「開業税理士」について、それぞれの1日のスケジュールを紹介します。税理士としての働き方を具体的にイメージする際の参考にしてください。
所属税理士の場合
所属税理士は、税理士法人や会計事務所に所属し、担当する顧問先に対する税務会計などの業務を担います。
訪問や申告書作成といった実務に加え、スタッフの指導やチーム内の調整を行う場面もあり、組織の一員としての動き方が求められます。
【所属税理士のある1日(モデルケース)】
時間帯 |
仕事 |
内容 |
8:30 |
出社・朝礼 |
出社後、朝礼までにメールチェックと当日の訪問予定・申告書類の進捗の確認をします。朝礼では、事務所全体の本日の動きや所長からの連絡事項を確認します。朝礼後、必要に応じて部下スタッフに個別に本日の予定を伝えるとともに、本日の業務指示を行います。 |
9:30〜12:00 |
顧問先訪問① |
担当の顧問先企業を訪問し、月次決算の報告や経営者からの相談対応を行います。 |
12:00〜13:00 |
昼食 |
事務所内でとることもあれば、訪問先の経営者と昼食をとることもあります。スタッフや顧問先の経営者と雑談を交えながら関係を深める大切な時間です。 |
13:00〜15:00 |
顧問先訪問② |
午後の担当先を訪問します。訪問予定がなければ事務所に戻り、所内対応を開始します。 |
15:00〜17:00 |
所内対応 資料作成 |
本日の訪問内容を記録し、留守中の連絡に対応します。その後、書類作成などの業務を進めます。スタッフからの質問を受けたり、入力済みの会計・申告データをチェックしたりもします。 |
17:00〜18:00 |
翌日準備 所内ミーティング |
翌日の訪問準備をします。税理士などリーダーのみの所内ミーティングが行われることもあります。 |
18:00 |
退社 (繁忙期は残業も) |
通常期はこの時間に退社します。繁忙期には、作業を続けることもあります。 |
このスケジュールはあくまでモデルケースですが、所属する税理士事務所、税理士法人の方針に従って働くのが所属税理士の働き方になります。
開業税理士の場合
開業税理士は、自ら事務所を経営しながら実務もこなす、プレイングマネージャーとして活動します。
自由度が高い一方で、顧客対応から事務所運営、営業活動や人材育成まで、多岐にわたる業務を自ら担う必要があるのが特徴です。
【開業税理士のある1日(モデルケース)】
時間帯 |
仕事 |
内容 |
9:00 |
業務開始 |
業務の開始時間は自由に決められます。午前中に予定がなければ、新聞や業界情報に目を通したり、軽い運動を取り入れたりすることで、集中力を高めた状態で仕事に取りかかることができます。 スタッフがいる場合は朝礼を通じて理念や方向性を共有し、チームとしての一体感を育むことも大切です。 |
9:30〜12:00 |
調べ物 顧問先対応 |
顧問先に依頼された調べ物の対応や、説明資料の作成などを行います。 |
12:00〜13:00 |
昼食 |
昼食は外出先でとることが多くなります。顧問先の経営者とのランチは、信頼関係を深める場であると同時に、新たな顧客を紹介される機会につながることもあります。 |
13:00〜15:00 |
オンラインによる顧問先との面談 |
顧問先との面談を行います。業務効率化のため、オンラインでの面談もありです。顧問先との対話の中で、資金繰りや節税、事業承継など、中長期的な視点での相談を受けた際は、相手のニーズを丁寧に拾い上げ、将来のビジネスチャンスにつなげていきます。 |
15:00〜17:00 |
事務所内対応 |
顧問先との面談後、必要に応じて調べ物や資料作成を行います。その後、事務所内の申告書や報告書の作成などの対応を進めます。スタッフからの質問を受けたり、入力済みの会計・申告データの確認を行ったりします。 |
17:00〜18:00 |
翌日準備・営業 |
スタッフが帰宅したあとは、事務所を閉めてから帰宅するまでの時間を使い、翌日の訪問準備やHP・ブログ・SNSの更新などの営業活動にあてます。 |
18:00~19:00 |
自己研鑽の時間 |
税制改正や法令の最新情報を把握するため、書籍やオンラインセミナーを活用して学習します。日々の業務に活かせる知識を継続的にインプットすることで、専門家としての信頼性を高めることができます。 |
19:00以降 |
退社(任意) |
予定がない日は早めに帰宅し、家族との時間を取るなど、プライベートも大切にできます。一方で、集中したい業務がある場合には、引き続き作業を行うことも可能です。働き方は自身の裁量で柔軟に調整できます。 |
1日のスケジュールから分かる所属税理士と開業税理士の違い
所属税理士と開業税理士では、日々の過ごし方にも明確な違いがあります。
所属税理士は、決まった出社時間に合わせて朝礼に参加し、チームの一員としてスケジュールに沿って行動します。訪問や申告書作成などの実務に加えて、所内での指導や情報共有も担い、安定した環境の中で組織的に働くスタイルです。
一方、開業税理士は始業時間や業務の進め方を自由に決められ、ライフスタイルに合わせた柔軟な働き方が可能です。午前中に運動や学習の時間を取るなど自己管理の幅が広く、終業後にはSNSやブログなどを活用した情報発信も行います。実務だけでなく、営業や経営の視点も求められるのが特徴です。
このように、所属税理士は「組織での役割をこなす安定した日常」、開業税理士は「自分で創る多様な日常」という、それぞれ異なる働き方を体現しています。自身の志向や働き方に対する考え方に応じて、自分に合ったスタイルを見極めるヒントになるでしょう。
1年間の時期ごとの詳しい業務内容は「 税理士の繁忙期はいつ?年間スケジュールと業務内容、残業時間を解説 」に掲載しております。是非参考にしてください。
税理士としての仕事内容の違いから将来のキャリアをイメージしよう
この記事では、税理士の仕事内容や、所属税理士・開業税理士のそれぞれの代表的な1日のスケジュールと働き方の違いについて解説しました。
税理士の仕事は、税務や会計にとどまらず、経営者に寄り添いながら企業の課題解決に貢献する専門職です。働き方によって1日の流れも異なりますが、いずれも高い専門性と顧問先との信頼関係の構築が求められます。
税理士として自分にあった働き方や将来のキャリアを思い描く一助となれば幸いです。
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