税理士の繁忙期はいつ?年間スケジュールと業務内容、残業時間を解説

税理士の繁忙期KV画像

税理士業界は、秋から翌春にかけて繁忙期となります。なぜ忙しくなるのでしょうか。また残業時間は事務所によって違うのでしょうか。この記事では税理士業界の繁忙期について触れ、繁忙期に注意すべき点についてもお伝えします。

目次[非表示]

  1. 1.税理士の年間スケジュールと繁忙期
    1. 1.1.年末調整:11月~翌年1月
    2. 1.2.法定調書・給与支払報告書:12月~翌年1月
    3. 1.3.償却資産の申告:翌年1月
    4. 1.4.個人の確定申告:翌年1月~3月
    5. 1.5.3月決算:4月~5月
  2. 2.税理士業界の閑散期とイベント
  3. 3.税理士業界の繁忙期における残業時間
    1. 3.1.平均的な残業時間
    2. 3.2.大規模な税理士事務所
    3. 3.3.中小規模の税理士事務所
    4. 3.4.専門特化型の税理士事務所
  4. 4.税理士の繁忙期についての注意点
    1. 4.1.勉強
    2. 4.2.業務管理
    3. 4.3.健康
    4. 4.4.人間関係
  5. 5.まとめ

税理士の年間スケジュールと繁忙期

税理士の繁忙期は基本的に11月から翌年5月までです。この期間に何があるのを確認しましょう。


年末調整:11月~翌年1月

年末調整は、会社の役員や従業員など、給与所得者の所得税を精算する手続きです。各種申告書を受け付けて内容を確認し、年税額と照合して1年間の源泉徴収税額を精算します。通常、12月の最後の給与で精算されますが、翌年1月支給分で調整することもあります。

なお、源泉所得税の納付は原則、毎月翌月10日です。ただ、納期の特例の適用を受けているのなら、7月から12月までに徴収した所得税を翌年1月20日までに納めることとなります。


法定調書・給与支払報告書:12月~翌年1月

法定調書は税務署への提出が法律で定められている資料のことです。年末調整の対象となった年の翌年1月末日までに、給与所得や退職所得の源泉徴収票の他、報酬や料金、不動産の使用料などの支払調書を税務署に提出しなくてはなりません。

この他、役員や従業員に支払った給与の額や控除額を記載した給与支払報告書も作成しなくてはなりません。こちらは支払った年分の翌年1月末日までに、それぞれの受給者が住む市町村に提出します。


償却資産の申告:翌年1月

償却資産税とは固定資産税の一種です。土地と建物以外の事業用の固定資産が対象で、その年の1月1日時点に保有しているものに課されます。賦課課税方式ですが、税額の計算の基となる償却資産を1月末日までに都税事務所や県税事務所などに申告しなくてはなりません。



個人の確定申告:翌年1月~3月

年明け1月から3月までは個人の所得税や贈与税、消費税の確定申告の時期となります。所得税は通常、2月26日から3月15日が申告期間です。しかし還付申告は翌年1月1日から可能となっています。贈与税の申告は2月1日から3月15日までに申告します。消費税の申告期限は3月31日です。



3月決算:4月~5月

日本の企業は3月決算が多いです。この場合、5月末日が法人税などの申告期限となるため、4月から5月も繁忙期となります。



税理士業界の閑散期とイベント

税理士業界の閑散期は、一般的に6月から10月です。この期間は巡回監査や記帳代行、月次決算、税務調査対応などが業務の中心となります。ただし、インボイス制度のように新しく始まる制度があるときは、顧問先説明や会計ソフトなどの対応に追われます。また、相続税の申告や融資の相談があれば、これにも対応しなくてはなりません。



税理士業界の繁忙期における残業時間

ここで、税理士業界の繁忙期における残業時間がどれくらいかを見てみましょう。



平均的な残業時間

2020年11月にMikatus株式会社が実施した「税理士業界における人材・採用・教育に関する実態調査」によれば、1か月あたりの平均的な残業時間は月30時間以内と回答した税理士事務所が全体の7割を占めました。週休2日なら、1日あたり平均1.5時間/の残業をしていることになります。

一方、繁忙期については「23,3%の事務所が月80時間以上の残業をしている」と回答しています。全体平均は44時間です。週休2日とすると、一日2.2~4時間以上の残業をしていることになります。


大規模な税理士事務所

大規模な税理士事務所だと、スタッフ数が多く、誰かが休んでも業務が遂行できる管理体制が整っていることが少なくありません。また、採算を考えて個人事業主の申告を受けないところもあります。そういったところは、年末調整や5月申告で忙しくなっても確定申告時期は残業が過度に増えない傾向にあります。



中小規模の税理士事務所

中小規模のいわゆる「街の税理士事務所」だと、大手よりも繁忙期の残業は増える傾向にあります。「大手ほどスタッフ数がいない」「1人が担当する顧問先数が多くなりやすい」といったことが背景にあります。記帳業務などの効率化が図られていれば別ですが、そうでなければ激務になるかもしれません。


専門特化型の税理士事務所

飲食店特化型やフリーランス特化型の税理士事務所だと、年明けから業務量が増える傾向にあります。顧問先に占める個人事業主の割合が高いからです。特に2024年の確定申告時期は、インボイスの影響で消費税の確定申告が加わります。そのため、例年以上に忙しくなり、残業が増えると見られます。

一方、資産税特化型の税理士事務所は、一般的な税理士事務所ほど忙しくはなりません。申告業務の中心は相続税と贈与税になるからです。そのため、年明けの確定申告は贈与税と譲渡所得、不動産所得の申告が中心で、他の税理士事務所ほど繁忙期に振り回されないものと見られます。


税理士の繁忙期についての注意点

税理士事務所が繁忙期になると、普段の習慣が崩れがちになります。結果、予想外の事態になることもめずらしくありません。次の点には注意するとよいかもしれません。


勉強

繁忙期になると残業が増えるため、勉強がしにくくなります。税理士を目指すスタッフなら税理士試験の勉強や大学院通学のための時間が、有資格者なら知識のアップデートのための時間がとれないからです。一度勉強の習慣をストップしてしまうと、復活させるのが難しくなるかもしれません。1日5~10分でもいいので、テキストや実務書、業界紙に目を通すようにしておきたいものです。



業務管理

業務を進めるにあたっては、計画を立てておくといいでしょう。「1日〇件」「○月×日までに△件」などと長期・中期・短期の目標を設定しておけば、不安や焦りを減らすことができます。予想外の事態になっても、計画がまったくないときよりも対処しやすくなるかもしれません。

さらに、作成した申告書や決算書のチェックシートを作成しておくと、効率よく確認作業を勧められます。スケジュール管理をきちんと行い、業務フローを決めておくと、残業の回数を減らせるかもしれません。


健康

繁忙期でもっとも注意したいのが健康です。どの税理士事務所でも残業が多くなりがちです。ときに徹夜をすることもあるかもしれません。しかし、がんばりすぎて体を壊すのは避けたいところです。また、疲労がたまると思わぬミスを誘発します。繁忙期でも睡眠時間をきちんと確保し、適宜休息をとるようにしましょう。



人間関係

税理士事務所の繁忙期が間接的に影響するのは人間関係です。忙しくなると公私ともに付き合いが悪くなります。特に気にしたいのが恋人や配偶者との関係です。会えないことで気持ちがすれ違い、気がついたら疎遠になっていた…ということにもなりかねません。忙しくてついうっかりしがちですが、気がついたら繁忙期でも連絡をとった方がいいでしょう。



まとめ

繁忙期になると、普段の習慣が崩れやすくなります。目の前の業務をひたすらこなすことに意識が向くからです。ただ、忙しいからと言って生活が乱れてしまうと、勉強や健康、人間関係に悪影響が及びます。忙しくても日々の習慣を維持できるような工夫を心がけるといいでしょう。




鈴木まゆ子
鈴木まゆ子
税理士・税務ライター。 中央大学法学部法律学科卒業。ドン・キホーテ、会計事務所勤務を経て、2012年税理士登録。朝日新聞「相続会議」、マイナビ税理士、納税通信などで税務・会計の記事を多数執筆。著書「誰でも簡単インボイス制度が分かる本(MSブック)」など。
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