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税理士事務所の事務所名と屋号との違いとは?

税理士事務所には、税理士会での登録名称として用いる「事務所名」と、一般的な呼称として看板や名刺、ホームページなどに用いる「屋号」があります。これらの違いについて解説します。

目次[非表示]

  1. 1.税理士登録時の事務所名とは
    1. 1.1.税理士と公認会計士では事務所名も変わる
  2. 2.事務所名と屋号の違いとは
    1. 2.1.税理士の7割が屋号を使わない?
    2. 2.2.正式名称と同じ屋号が多い理由
  3. 3.税理士事務所の事務所名と屋号との違いのまとめ


税理士登録時の事務所名とは

税理士法では、税理士がその業務を行うには事務所を設けることが必要であるとし、その事務所は「税理士事務所」と称するように定められています。(税理士法第40条第1項、第2項 ※1)

(※1)税理士法 | e-Gov 法令検索
(https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC1000000237/20240101_431AC0000000003#Mp-Ch_4-At_40)


また、税理士が独立開業するには、事務所を設けようとする地区の税理士会に税理士登録の申請を行う必要があります。その際、登録する事務所の名称は、「その税理士の税理士事務所であることを明示するもの」でなければなりません。(日本税理士会連合会会則第34条第2項 ※2)

(※2)日本税理士会連合会会則 (PDF 10/34) 10ページ目
(https://www.nichizeiren.or.jp/wp-content/uploads/doc/nichizeiren/about/detail/kaisoku-R1.7.25.pdf)


これらを踏まえて、税理士登録の手続きにおける開業税理士の事務所名は、以下の2パターンのいずれかにするよう指示されています。(税理士登録の手引 ※3)

【パターン1】
フルネーム+税理士事務所
【パターン2】
税理士+フルネーム+事務所


(※3)日本税理士会連合会 :税理士登録の手引 (PDF 27/48) 23ページ目
(https://www.nichizeiren.or.jp/wp-content/uploads/doc/cpta/system/entry/howto/entrymanualR6.pdf)


例えば、これから独立開業する税理士の氏名が鈴木太郎さんである場合、税理士登録の際は、「鈴木太郎税理士事務所」か「税理士鈴木太郎事務所」のいずれかの事務所名で申請する必要があるということです。

税理士と公認会計士では事務所名も変わる

公認会計士の有資格者は公認会計士と税理士の両方に登録することで、「公認会計士 兼 税理士」として独立開業することができます。
その場合、公認会計士については公認会計士協会で、税理士については税理士会で、それぞれ登録を受ける必要があります。
その際の事務所名はどうなるのかというと、公認会計士と税理士、それぞれの事務所名のルールに基づき、異なる名称で登録されるのが一般的です。

【公認会計士の事務所名】
「氏名または氏」および「公認会計士」の文字を使用する(※4)

【税理士の事務所名】
「氏名+税理士事務所」または「税理士+氏名+事務所」


例えば、鈴木太郎さんが公認会計士・税理士として登録する場合、公認会計士登録では「鈴木公認会計士事務所」、税理士登録では「鈴木太郎税理士事務所」のように、それぞれの異なる名称で登録されることになるイメージです。

ちなみに公認会計士登録において、「氏名または氏」と「公認会計士」を使わずに事務所名を申請した場合、事務局側の判断で、事務所名を「氏名または氏」と「公認会計士」を使ったものに訂正して登録手続きを進めることもあるようです。(※4)

(※4)日本公認会計士協会:公認会計士開業登録の手引(PDF 16/43 15ページ)
(https://www.hp.jicpa.or.jp/app_kaigyo/kaigyo_tebiki.pdf)

事務所名と屋号の違いとは

事務所名を「氏名+税理士事務所」または「税理士+氏名+事務所」としなければならないことは、あくまで税理士登録の手続きにおけるルールです。

一方で、税理士は、登録上の正式名称とは別に、事業名としての屋号を自由に設定し、事務所運営を行うことができます。
税理士名簿の上での名称が「鈴木太郎税理士事務所」であっても、普段の業務では「すずき会計」を名乗って活動してもよいのです。

税理士の7割が屋号を使わない?

事務所名と異なる屋号を使用している税理士事務所は多いのでしょうか?

正式名称と屋号を別に設けるかどうかに関する統計はありませんが、経済産業省の認定経営革新等支援機関の認定制度を参考資料として推計することができます。
この制度では、新たに認定を受けた機関名を年6回、偶数月に公開しており、その中にはもちろん税理士事務所もあります。同制度で公開されている税理士事務所から、屋号を使用している税理士を調査しました。

このホームページによると令和5年中に認定を受けた税理士の数は1,094名ですが、屋号(経営認定支援機関の場合、「店舗名」)を登録している1,077名のうち、おそらく正式な事務所名のままであると推察される「フルネーム+税理士事務所」や「税理士+フルネーム+税理士事務所」を使用する事務所が全体の約74%を占めている結果となりました。
ちなみにほとんどが「フルネーム+税理士事務所」でした。


屋号

使用例

件数

割合

フルネーム+税理士事務所

鈴木太郎税理士事務所

794

73.7%

税理士+フルネーム+事務所

税理士鈴木太郎事務所

7

0.6%

合計

801

74.4%


(出典)経済産業省HPの認定経営革新等支援機関から独自に集計して作成
(https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kakushin/nintei/)

屋号を自由に設定できるといっても、実際には、税理士事務所としての正式な登録名称をそのまま普段の事業でも使用することが多いようです。

正式名称と同じ屋号が多い理由

税理士登録に使用した正式名称をそのまま屋号にも使用する理由としては、税理士の名前で検索されやすいという利便性や、また税理士会や税務署との手続きにおいては正式名称を使用する機会もあるため、2つの名称を使い分ける煩雑さを避けるという理由が考えられます。
それ以外にも、特に使用したい事務所名がなく屋号を別に設定する必要性を感じないという理由も多いでしょう。

一方で、屋号を設定することによるメリットもあります。それは屋号自体が事務所のブランディングになることです。
事務所の強みが分かるキーワードを屋号に入れたり、聞き取りやすい・呼びやすい屋号を設定したりすることで、事務所の名前が印象に残り、覚えてもらいやすくなります。屋号そのものが他の事務所との差別化になり、集客力の向上に繋がることも期待できます。

屋号を付ける際のポイントについてはこちらの記事で詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。

関連記事:税理士事務所の屋号を決める際のポイントとは

税理士事務所の事務所名と屋号との違いのまとめ

この記事では、税理士事務所の事務所名と屋号との違いについて説明しました。

付け方に厳密なルールがある事務所名と違って、屋号はほぼ自由に設定することができます。
実際には事務所名をそのまま屋号として使用している税理士事務所が多いですが、効果的な屋号を設定することができれば、他の事務所と差別化できるチャンスになります。

税理士開業の際にはぜひ屋号についても検討するようにしましょう。

freeeでは税理士開業を目指す方のために、事務所名や屋号のルール・決め方のほかにも、独立開業時に準備すべきことのすべてが分かる事務所開業ハンドブックを提供しております。ぜひ、こちらも参考にしてください。

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