税理士試験に合格して税理士登録しない理由

税理士試験に合格したものの、すぐに税理士登録をしない選択をする人が一定数存在します。言うまでもなく、税理士登録をしなければ、税理士として認められません。
多くの時間と努力を費やして合格を勝ち取ったにもかかわらず、なぜあえて登録しないのでしょうか。
この記事では、あえて税理士登録をしない理由、税理士登録をしない場合に受ける制限、登録せずとも資格を活かす働き方、さらには自分自身は登録すべきかどうかの判断するポイントについて、詳しく解説します。

     

目次[非表示]

  1. 1.登録しない主な理由
    1. 1.1.独立・開業を予定していない
    2. 1.2.未登録でも評価され、活躍できる環境がある
    3. 1.3. 税理士登録の費用と手続きがハードルになることも
  2. 2.登録しないことで制限されること
    1. 2.1.税理士と名乗ることができない
    2. 2.2.税理士の独占業務が行えない
    3. 2.3.将来の独立・転職の選択肢が狭まる可能性がある
  3. 3.登録せずに資格を活かす働き方
  4. 4.登録するかどうかを判断する基準
  5. 5.登録は目的に応じて選択すればいい

登録しない主な理由

税理士試験に合格しても税理士登録をしない人には、さまざまな理由があります。ここでは、その代表的な理由を解説します。

独立・開業を予定していない

税理士登録をする主な目的に、「開業税理士」としての独立・開業があります。最初から独立するために税理士を目指す人もいるほど、税理士は独立開業しやすい資格の一つです。
しかし、すべての受験者が独立を目指しているわけではありません。会計事務所や一般企業で安定的にキャリアを築くことを重視する人が、その一環として税理士試験に挑戦するケースもあります。そうした合格者は、税理士登録に必要性を感じていないため、登録しないままになることがあります。

未登録でも評価され、活躍できる環境がある

税理士試験に合格しても、登録せずに働き続けることは十分可能です。たとえば、税理士法人や個人事務所に勤める場合、登録税理士の監督下で業務を行うことで、未登録でも実務を担当できます。実力が認められていれば、登録していないことによって事務所内での評価が下がることも少なく、働きやすさが大きく変わらないケースもあります。

また、転職市場においても、登録していない「試験合格者」を歓迎する求人は多く存在します。その対象は会計事務所だけでなく、企業の経理・財務部門やコンサルティング会社など幅広く、税理士登録を必要としない職種でも、難関試験を突破した実力が評価され、即戦力として迎えられることが一般的です。

このように、未登録のままでもキャリアを築きやすい環境が整っていることから、「今すぐ登録する必要はない」と考える合格者が一定数いるのも自然なことだといえるでしょう。

税理士登録の費用と手続きがハードルになることも

税理士登録を行うには、初期費用として約20万円が必要で、登録後も税理士会への年会費として年間10〜15万円程度が継続的に発生します。こうした費用負担に加え、登録手続きには多くの書類提出が求められ、特に実務経験を証明する在職証明書などは勤務先に発行してもらう必要があります。場合によっては、すでに退職した職場に連絡しなければならず、それを煩わしく感じる人も少なくありません。

税理士試験の合格は生涯有効であるため、「必要になったときに登録すればいい」と考える人にとっては、こうした金銭的・事務的な負担が、登録を先延ばしにする一因となっています。

税理士登録にかかる費用や資格の維持にかかる費用についての詳細は、「 税理士が開業するときに必要な資金は? 」「 税理士資格の維持費|毎年かかるコストをわかりやすく解説 」を参考にしてください。

登録しないことで制限されること

税理士登録しない選択には、一定の合理性がありますが、一方で、登録しないことにより制限されることも存在します。ここでは、未登録のままでいることによる制限を解説します。

税理士と名乗ることができない

税理士登録をしていない場合、「税理士」を名乗ることは税理士法で禁止されています。違反した場合は100万円以下の罰金刑が科される可能性もあります。(※1)(※2)
この規制があることにより、税理士登録をしなければ、名刺や履歴書、Webサイト上などでも肩書として「税理士」を使用することはできません。せっかく税理士として十分な知識を有しているにもかかわらず、それをPRできる機会が極端に制限されてしまいます。

(※1)税理士法第五十三条第一項(税理士法 | e-Gov 法令検索)
https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC1000000237#Mp-Ch_7-At_53
(※2)税理士法第六十一条第一号(税理士法 | e-Gov 法令検索)
https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC1000000237#Mp-Ch_8-At_61

税理士の独占業務が行えない

税理士の独占業務である「税務代理」「税務書類の作成」「税務相談」は、登録を受けた税理士のみ行うことができます。
事務所の税理士の監督下で、これらの業務に補助的に関わることは誰でも可能ですが、自身の判断と責任においてこれらを単独で行うことは、税理士登録をしなければ認められません。違反すれば、2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が科される可能性があります。(※3)(※4)
税理士の独占業務について詳細は、「税理士の独占業務とは|業務内容や違反リスクを解説」にて紹介していますので、あわせてご覧ください。

(※3)税理士法第五十二条(税理士法 | e-Gov 法令検索)
https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC1000000237#Mp-Ch_7-At_52
(※4)税理士法第五十九条第四号(税理士法 | e-Gov 法令検索)
https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC1000000237#Mp-Ch_8-At_59

将来の独立・転職の選択肢が狭まる可能性がある

税理士登録をしていない「未登録者」を対象とする求人は数多くあります。
しかし中には、応募者の幅を広げるための記載にすぎず、実際には「税理士としての登録済み人材」が求められているケースもあります。特に、自らの名義で税理士業務を経験してきた人のほうが、即戦力として評価されやすい傾向にあります。

たとえば、所内の税理士数を増やして事務所の差別化や事業拡大を図りたい場合や、後継者不在の個人事務所が承継先を探しているような場合には、すぐに登録できる人材が求められることがあります。

税理士登録の手続きには多くの書類と時間が必要であり、特に実務経験の期間がギリギリである場合などは、登録に手間取ることもあります。
「いつでも登録できる」と油断せず、いざというときに備えて準備を進めておくことが、キャリアのチャンスを逃さないために重要です。

登録せずに資格を活かす働き方

税理士登録をしなくても、税理士試験合格者として知識や経験を活かして活躍できるフィールドは数多く存在します。

【税理士登録をしなくても活躍できる職種の例】

  • 税理士法人や会計事務所での税理士補助者
  • 一般企業の経理・財務部門の管理職
  • 資格学校や教育機関などでの講師
  • 税務会計に関する執筆業
  • 経営コンサルタント

など

このように、税理士登録を行わなくても、税務・会計の専門知識を活かせる職種は幅広く存在します。
特に、税理士法人や会計事務所、一般企業の経理・財務部門であれば、税理士試験に合格したことが高く評価され、即戦力として歓迎されるでしょう。

登録するかどうかを判断する基準

税理士として登録するかどうかの判断は、自身のキャリア設計や働き方、将来の展望を踏まえて検討する必要があります。
わかりやすい判断軸は、「税理士としてキャリアを築きたいか」それとも「肩書にはこだわらないか」という点です。

将来的に税理士として活躍したいのであれば、勤務先の方針にもよりますが、早い段階での登録が望ましいでしょう。
特に独立を視野に入れている場合は、税務相談への対応や税務調査への立ち会いなど、実務経験を積むことが将来の自信につながります。
また、独立志向がなくても、税理士を求める転職市場では「登録済みかどうか」が評価のポイントとなることもあります。ライフステージの変化により将来自宅での開業を考えるようになった場合にも、登録経験は大きな強みになります。

一方で、「税理士という肩書にはこだわらない」と明確に考えているのであれば、無理に登録する必要はありません。
税理士法人や会計事務所での補助業務、一般企業の経理・財務部門の管理職など、登録がなくても専門知識を活かせる場面は多くあります。
組織内でスキルを発揮し、周囲をリードしながらキャリアを築いていくのも、税理士試験に合格したからこそ選べる道の一つです。

登録は目的に応じて選択すればいい

税理士登録をしない理由には、それぞれのキャリアや働き方に基づいた事情があります。
「独立の予定がない」「登録にかかるコストを負担に感じる」あるいは「登録せずとも十分に力を発揮できる環境にいる」といった状況で、今自分らしく働けているのであれば、無理に税理士登録をして自分に合わない道を選ぶ必要はありません。

登録することにも、しないことにもそれぞれの良さがあります。大切なのは、自分自身のキャリアをどのように築いていきたいのか、今とこれからを見据えて納得のいく選択をすることです。
「税理士試験合格者」であること自体が大きな実績です。税理士として一歩を踏み出すかどうかは、自分の人生や仕事の方向性と照らし合わせ、焦らず前向きに考えていきましょう。

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