
税理士に英語力は必要?活かせる仕事やキャリアの可能性を解説
「税理士に英語力は必要なのか?」「英語を活かして税理士として活躍できるのか?」
こうした疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
近年のビジネスのグローバル化やクライアントの多様化により、税理士が英語を使う場面は確実に増えています。
特に、外資系企業や海外進出企業をクライアントに持つ場合、英文書類の読解・作成や英語での打ち合わせなどが日常業務に含まれることも珍しくありません。
こうした業務に対応できる英語力は、税理士として独立開業を目指す方にとって、他事務所との差別化を図る強力な武器になります。
本記事では、税理士に英語力が求められる背景や、英語を活かせる業務分野、転職や独立開業におけるメリット、そして実際に求められるスキルまでを詳しく解説します。
目次[非表示]
- 1.英語力が求められる背景とその理由
- 2.英語力を活かせる税理士の業務分野
- 2.1.国際税務
- 2.2.海外資産税務
- 2.3.外国人の居住者の税務支援
- 3.英語力が強みになる転職先やキャリアパス
- 3.1.Big4税理士法人
- 3.2.コンサルティングファーム
- 3.3.外資系企業
- 3.4.国際取引の多い事業会社
- 3.5.金融機関
- 4.税理士に求められる英語力と関連スキル
- 5.英語力は独立税理士の差別化にもつながる
英語力が求められる背景とその理由
近年、外資系企業や海外進出企業の増加により、税理士にも英語力が求められる場面が確実に増えています。
かつてグローバル企業といえば大企業が中心でしたが、インターネットやIT技術の発展により、中小企業や個人事業主でも海外と取引を行うケースが増加しています。
実際、経済産業省「企業活動基本調査」のデータをもとに作成されたグラフを見ると、2021年度に外国企業への直接輸出(直接取引)を行った企業の割合は、
- 大企業:28.1%
- 中小企業:21.0%
と、中小企業でも5社に1社以上が海外との直接取引を行っている状況が明らかになっています。
このように、企業の規模にかかわらずグローバル化が進むなか、税理士にも英語での書類対応やコミュニケーションが求められる機会が増えているのです。
(画像出展)中小企業庁|2024年版中小企業白書「海外展開」より
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2024/chusho/b1_3_8.html
また、輸出以外にも業務提携などを含む、幅広い海外展開を対象に行った調査となりますが、海外展開を行う企業の「業種別」の割合は、製造業、卸売業、情報通信業が上位となっています。
中小企業庁|2023年版中小企業白書 成長に向けた海外展開
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2023/chusho/b2_1_4.html
英語力を活かせる税理士の業務分野
英語力を備えた税理士は、国際取引や海外とのやり取りを伴う業務において高い価値を発揮できます。
国際税務をはじめ、日常的な英文資料の読解・作成や、海外法人とのコミュニケーション、外国人投資家への対応など、幅広い業務で英語力が求められています。
これらの業務に携わることで、将来的には「国際税務に強い事務所」「外国人対応が可能な税理士」としてブランディングし、独立開業時の差別化にもつなげることができるでしょう。
以下では、英語力を活かせる代表的な業務分野を紹介します。
国際税務
国際税務とは、国をまたぐ経済活動に関連する税務全般を指します。
具体的には、以下のような目的で設けられた制度に対応します。
- 所得の移転による租税回避の防止
- 複数国で課税されることによる二重課税の回避
- 租税条約に基づく優遇措置の適用判断 など
外資系企業や海外展開を行う日本企業の顧問税理士を務める場合、取引相手国の税法や国際ルールを踏まえた助言が求められます。
英語力があれば、海外の税務情報のリサーチや英文契約書・資料の読解がしやすくなり、より精度の高いサービス提供が可能になります。
また、国際税務の実務を積むことで、以下のような高単価かつ専門性の高い業務へ発展させることもできます。
- 海外進出支援や現地法人設立に関するコンサルティング
- 移転価格税制対応
- 多国籍企業向けの税務戦略設計
これらの分野は、他の税理士との差別化や将来の独立後に強みとなる分野でもあり、英語力の活用が大きな武器となるでしょう。
海外資産税務
複数の国の資産を保有している個人に対しても、英語力のある税理士の活躍が期待できます。
英語力のある税理士であれば、海外の制度や財産評価に必要な資料を正しく読むことができるため、海外資産を保有する個人の所得税、相続税・贈与税などの税務申告で活躍することができます。
また、資産運用や相続や事業承継などのコンサルティングを併せて提供することで、国内外の富裕層をターゲットにさまざまな事業を展開するチャンスも広がります。
外国人の居住者の税務支援
英語力のある税理士は、日本での税務支援を必要とする外国人の納税者にも必要とされています。たとえば、日本で働く外国人や日本国内に不動産を所有している外国人などです。
こうした方々は、確定申告の支援や帰国時の税務手続きなどを必要としています。
英語力のある税理士であれば、ホームページやメールフォームを英語にしたり、日本の税制をわかりやすく解説するコンテンツを掲載することで、こうした外国人から依頼を受けるチャンスを作り出すことができます。
英語力が強みになる転職先やキャリアパス
それでは、税理士が英語力を活かせる、代表的な転職先やキャリアパスを紹介します。
Big4税理士法人
英語力を活かしたい税理士にとって、まず代表的な勤務先といえるのが「Big4」と呼ばれる大手税理士法人です。PwC税理士法人、デロイト トーマツ税理士法人、KPMG税理士法人、EY税理士法人はいずれも国際税務や移転価格コンサルティング、国際資産税務など、海外案件を数多く取り扱っています。これらの業務は専門性が高く、海外拠点や外国企業とのコミュニケーションが日常的に発生するため、ビジネスレベルの高い英語力が必須です。こうした大手税理士法人では実務経験を積みながら高度な国際業務に携われるため、キャリアの早い段階から市場価値を高めることができます。
コンサルティングファーム
戦略系や財務系のコンサルティングファームも、英語力を持つ税理士が活躍できる場です。グローバル企業の経営戦略立案や組織再編、国際M&Aの支援など、税務の知識と英語での情報収集力や提案力が求められます。さらには、海外拠点のプロジェクトなど、幅広い国際案件に関わることも可能です。英語力を備えた税理士は市場での希少性が高いため、高年収・専門性の高いポジションを狙えるでしょう。
外資系企業
外資系企業の日本法人では、税務や経理業務と並行して、本国へのレポーティングや国際会計基準(IFRS)への対応が必要になります。海外本社の経営陣や財務部門とやり取りするため、日常的に、英語による資料作成やオンライン会議への対応が求められる業務です。こうした企業は、さらなるグローバル展開を目指している場合が多く、高度な英語力や柔軟な対応力が活かせる場面が豊富にあります。
国際取引の多い事業会社
製造業、商社、IT業界など、海外に子会社や取引先を多く持つ企業では、経理部門などでも英語力が求められます。海外拠点の決算の取りまとめ、移転価格文書の作成、外国税制の調査、海外出張や現地担当者とのやり取りなど、英語力が必要な場面は豊富にあり、税務会計の知識と併せて存分に力を発揮することができます。
金融機関
外資系投資銀行や国際取引を扱う大手金融機関においても、英語力を持つ税理士の需要があります。特に、国際的な投資案件やM&Aでは、複数の国の税務や法務を理解して調整する必要があるため、英語での資料作成や契約交渉のスキルが必要です。また、日常的に外国人クライアントや海外支店とやり取りするため、英語での会話能力を活かすこともできます。
税理士に求められる英語力と関連スキル
英語が必要となる税理士業務では、専門的な情報を正確に読み取り、適切に伝える力が重要です。特にリーディング・ライティング・会話力の3つが重視されます。
英語力の目安としては、TOEIC700点以上(英検準1級程度)が一つの基準です。このレベルがあれば、専門分野の英文資料の読解や、日常的なビジネスコミュニケーションに対応できるとされています。
さらに、EA(米国税理士)やUSCPA(米国公認会計士)などの国際資格を取得すれば、英語力だけでなく海外税務の専門性もアピールしやすくなります。
ただし、英語力だけでは不十分で、幅広い税務・法務の基礎知識も不可欠です。英語を活かして活躍したい税理士には、以下の分野の知識が特に役立ちます。
- 法人税、所得税:移転価格税制、過小資本税制、PE課税、外国税額控除、国外の源泉徴収事務、グローバル・ミニマム課税など
- 資産税:国内外の納税義務と課税財産の判定、財産評価など
- 消費税:海外事業者のリバースチャージ・インボイス制度対応など
- その他法律知識:民法・会社法など(主に契約や法人形態に関する法制度)
英語力とこれらの専門知識を掛け合わせることで、国際税務の分野で高い付加価値を発揮できる税理士を目指すことができます。
英語力は独立税理士の差別化にもつながる
税理士にとって英語力は、キャリアアップや差別化につながる強力なスキルです。国際案件では高単価報酬も期待でき、事務所の収益向上にも大きく貢献します。
独立後も「英語対応可能」「国際税務に強い」といった専門性をアピールできれば、外資系企業や海外進出を目指す企業など成長性の高い顧問先の獲得も狙えます。
このように英語力を身につけることで、税理士として活躍の場が広がり、グローバルに活躍できる道が開けるでしょう。
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