
ひとり税理士の実態と成功するためのポイント
近年、「ひとり税理士」という働き方が注目を集めています。
従業員を雇わず一人で事務所を運営するスタイルは、人件費がかからず損益分岐点が低いうえ、自由度が高く自分のペースで働けるのが特徴です。
そのため、精神的にも余裕を持ちながら、やりたい仕事に挑戦しやすい働き方といえます。
本記事では、ひとり税理士のメリット・デメリット、収入の目安と安定化の方法、そして成功のための具体的なポイントをわかりやすく解説します。
目次[非表示]
- 1.ひとり税理士とは
- 2.ひとり税理士のメリット
- 2.1.スタッフの管理が必要ない
- 2.2.経費を抑えて身軽な経営ができる
- 2.3.自由な時間帯で働ける
- 2.4.顧問先と担当者の相性を気にしなくていい
- 2.5.柔軟でスピーディーな対応ができる
- 3.ひとり税理士のデメリット・課題
- 3.1.業務負担が集中する
- 3.2.収入が伸び悩む
- 3.3.孤独を感じる
- 3.4.大型案件への対応が難しい
- 4.ひとり税理士の収入の目安と安定化の工夫
- 5.ひとり税理士として成功するためのポイント
- 5.1.高付加価値の専門分野を持つ
- 5.2.ネットワークを活用する
- 5.3.リスク管理を徹底する
- 5.4.デジタル・ITを活用する
- 6.ひとり税理士で独立を前向きに考える
ひとり税理士とは
ひとり税理士とは、従業員を雇わず、すべての業務を自分一人で担う開業税理士を指します。
会計事務所では「税理士1名+スタッフ数名」という体制が一般的ですが、ひとり税理士は営業・経理・顧客対応・事務処理までを一人で完結させる点が特徴です。
その分、働き方や経営方針を自由に決められますが、安定した収入を維持するためには経営戦略や専門性の確立が欠かせません。
ひとり税理士のメリット
ひとり税理士には、「人間関係のストレスが少ない」「経費を抑えられる」「自由度が高い」「柔軟な顧客対応ができる」といった多くのメリットがあります。
特に「顧客対応」に関しては、顧問先にとってもメリットが大きい点が特徴です。
ここでは、ひとり税理士として働く主なメリットを見ていきましょう。
スタッフの管理が必要ない
スタッフを抱える事務所では、売上が落ちてもまずは給与を支払わなければなりません。
このプレッシャーが経営者の心理的負担となり、無理な働き方を招くことがあります。ひとり税理士なら、固定費が少ない分だけ意思決定が自由です。
採算の悪い仕事やストレスの大きい契約を見直したり、プライベートに合わせて仕事量を調整したりすることも可能。
こうした柔軟さが、心身の余裕と持続的な経営につながります。
経費を抑えて身軽な経営ができる
SNSは、文章や写真、動画など多様な発信方法を選べます。そのため、無理なく続けられるよう、自分が得意な方法で投稿しやすいSNSを選ぶことがポイントです。
たとえば、文章が得意な人は、短文向きのX(旧Twitter)や長文投稿も可能なFacebookが適しているかもしれません。
一方、話すのが得意であれば、YouTubeやTikTokなど動画中心のSNSでの発信が効果的です。
後述する「各SNSの特徴」では、それぞれのSNSがどんなスタイルに向いているかを比較していますので、ご自身に合うSNSを探すヒントにしてください。
自由な時間帯で働ける
スタッフを抱える事務所では、就業時間の管理や朝礼・ミーティングなどの運営業務が発生します。
一方、ひとり税理士は働く時間を完全に自分で設計できます。
午前に予定がなければ昼から仕事を始める、クライアント対応が早く終わればそのまま業務を切り上げるなど、その日の状況に合わせた働き方が可能です。
平日を休みにして土日に集中するなど、ライフスタイルと仕事の両立がしやすいのも魅力です。
顧問先と担当者の相性を気にしなくていい
「面談した税理士先生が良かったのに、すぐ新人に担当が変わった」「対応が悪くなったのに顧問料は同じ」- こうした不満は、組織的な事務所では珍しくありません。
しかし、ひとり税理士なら契約した本人が一貫して顧問先を担当します。そのため、担当交代によるミスマッチや品質低下の心配がなく、顧問先との信頼関係を継続的に築けます。
「契約した相手が最後まで担当してくれる」という安心感は、顧問先にとっても大きなメリットです。
柔軟でスピーディーな対応ができる
顧問先からの質問や要望に対して、即断・即対応できるのもひとり税理士の強みです。スタッフを介して確認する手間がなく、意思決定のスピードが格段に上がります。
また、土日や夜間の相談にも、自分の裁量で柔軟に対応できるため、顧問先の要望に合わせたサポートが可能です。
このような迅速かつ柔軟な対応は、「頼れる」「話が早い」と顧問先から高く評価される要素になります。
ひとり税理士のデメリット・課題
ひとり税理士は多くの自由を得られる一方で、すべてを一人で担うことによるリスクも存在します。
ここでは、独立後に直面しやすい主な課題を見ていきましょう。
業務負担が集中する
ひとり税理士は、事務所運営のすべてを自分で行う必要があります。
記帳代行など、税理士でなくてもできる業務まで引き受けすぎると、日々の雑務に追われて本来の専門業務に時間を割けなくなることも。
結果として、重要な仕事に注力できず、疲労とともにモチベーションが低下していき、「こんなはずではなかった」と感じるケースも少なくありません。
収入が伸び悩む
ひとりで顧問先をすべて対応する以上、売上拡大には限界があります。
たとえば、毎月面談を行うサービスであれば、30件前後が限界となるでしょう。さらに記帳代行や給与計算も行う場合は、対応件数を減らさざるを得ません。
「顧問先を増やして労働時間を伸ばす」だけの働き方では、時間と体力が限界に達し、収入の頭打ちという壁にぶつかります。
孤独を感じる
一人で働くことは自由度が高い反面、相談相手がいない孤独感を伴います。
思考が煮詰まったとき、雑談や他人の意見から得られる気づきが少なく、精神的な負担を感じやすい傾向にあります。
また、「人に頼られることで力を発揮する」「チームで働くことでモチベーションが上がる」というタイプにとっては、ひとりでの業務環境がかえってストレス要因となることもあります。
自由な働き方が魅力のひとり税理士ですが、すべての人に適したスタイルとは限らない点を理解しておくことが大切です。
大型案件への対応が難しい
顧問業務の中では、M&A・相続・事業承継などの大型案件が発生することもあります。
しかし、日常業務で手一杯だと、新たな案件に十分なリソースを割けず機会を逃すことになりかねません。
こうした事態を防ぐには、日頃から余力を持ったスケジュール設計と外部連携の活用を意識することが重要です。
ひとり税理士の収入の目安と安定化の工夫
経済センサス活動調査の結果によると、開業税理士全体の平均年収(売上-費用)はおおむね約1,000万円とされています。
関連記事:「税理士が独立開業後の年収はどのくらい?」
ただし、ひとり税理士の場合は対応できる顧問先の数や業務量に限界があります。
「顧問先を増やして労働時間を延ばす」働き方では、時間も体力も限界があり、収入の伸び悩みにつながります。では、ひとり税理士がこの水準の収入を安定的に得るには、どのような工夫が必要なのでしょうか。
安定化のカギは、限られた時間の中で付加価値を高め、効率よく収益を生み出す仕組みをつくることにあります。
たとえば、経営計画の策定や実行管理の支援など、継続性があり経営者にとって付加価値の高いサービスを提供することが考えられます。これを税務顧問業と組み合わせることで、顧問単価の向上が期待できるでしょう。
このときは、サービス内容に見合った適正な報酬設定を行い、安易に価格競争へ踏み込まない姿勢も重要です。また、記帳代行や給与計算といった定型業務を信頼できる外部パートナーに委託すれば、時間を生み出し、付加価値の高い業務に集中できます。
さらに、クラウド会計ソフトなどのITツールを活用して業務そのものを効率化する視点も欠かせません。業務の自動化やデジタル化を進めれば、同じ労働時間でも収益性を高めることができます。
このように、業務の「質」と「効率」の両面を意識することで、ひとり税理士でも安定した収益基盤を築くことは十分に可能です。
次の項目では、この基盤をもとに長期的に成功し続けるための具体的なポイントを紹介します。
ひとり税理士として成功するためのポイント
ひとり税理士として成功するには、小規模事業者ならではの強みを活かし、長期的な成長を見据えた工夫と戦略が欠かせません。
ここでは、ひとり税理士が安定して成果を上げるための具体的なポイントを解説します。
高付加価値の専門分野を持つ
税務顧問や申告代理といった一般的なサービスは、どうしても価格競争に陥りやすく、単価を上げにくい傾向があります。
そのため、付加価値の高い専門分野を確立することが、ひとり税理士として成功するカギとなります。
たとえば、医業・IT業・相続・事業承継・経営コンサルティング・スタートアップ支援など、特定の業種や領域に専門特化する戦略です。
「◯◯ならこの地域でナンバーワン」といわれるポジションを築ければ、限られた顧問先数でも安定した収益を確保しやすくなります。
ネットワークを活用する
ひとり税理士にとって、人とのつながりは経営を支える大切な資産です。
他の税理士や、社労士・行政書士・司法書士などの他士業とのネットワークを築くことで、仕事を紹介し合う関係が生まれます。
また、定期的な情報交換を通じて法改正や業界動向を共有でき、自分一人では得られない知見を取り入れられるのも大きなメリットです。
さらに、一人で仕事をしていると、一時的に人手が必要になる場面もあります。
たとえば、記帳代行や資料作成などをスポットで依頼したい場合です。そのようなときのために、税理士業務に理解のある外注業者や会計事務所出身のフリーランスと提携しておくと心強いでしょう。
繁忙期や急な案件にも柔軟に対応でき、自身はより付加価値の高い業務に専念できます。
リスク管理を徹底する
ひとりで事務所を運営することは、自由度が高く、自分の裁量で仕事を選べる大きな魅力があります。
しかしその裏には、顧問先に対して自分一人で経営を継続する責任が伴います。
安定した事務所運営のためには、常にリスク管理を意識することが欠かせません。
まずはキャッシュフローを正確に把握し、少なくとも半年分の運転資金を確保しておくことが重要です。
加えて、法改正や社会情勢の変化に迅速に対応できるよう、情報収集の仕組みを日常的に整えることも必要です。
自由と責任のバランスを意識しながら経営することで、ひとり税理士としての働き方を安定させることができます。
デジタル・ITを活用する
デジタル技術の活用は、ひとり税理士にとって時間を生み出す最大の武器です。
たとえば、クラウド会計ソフトを導入するだけでも、場所や時間に縛られずに業務を進められるようになります。
また、顧問先とのオンライン面談やクラウドストレージを活用すれば、書類のやり取りや面談にかかる時間を大幅に削減できます。
「ひとり」だからこそ、こうしたツールを使って生産性を高めることは不可欠です。
近年の会計ソフトは、外部データとの連携やAIによる自動処理が進化しており、顧問先への導入支援自体が新たな価値提供にもなります。
自分の業務効率化の取り組みがそのまま顧問先のサポートにつながるため、まずは自分自身の業務からデジタル化を進めることをおすすめします。
ひとり税理士で独立を前向きに考える
ひとり税理士というスタッフを雇わない働き方には、大きな自由があります。
時間や働く場所を自分で決められ、顧問先に対しても柔軟に対応できるため、人に縛られたくない税理士やライフスタイルを重視したい税理士にとって魅力的な選択肢です。
一方で、すべての業務を自分で担うからこそ、業務負担の偏りや収入の上限、孤独感といった課題も避けて通れません。
しかし、これらの課題は工夫次第で乗り越えることができます。
ITの活用や外部パートナーとの協力、専門分野の確立などを通じて、効率化と付加価値の両立を図れば、「ひとりでも安定して稼げる仕組み」を築くことが可能です。
自分の価値観やライフプランに合う働き方を目指し、ぜひ前向きに独立を検討してみてください。
なお、freeeでは税理士の独立開業を目指す方に向けて、開業準備に必要な情報をまとめた「事務所開業ハンドブック」を無料で提供しています。独立後の将来像を描くうえでの参考資料として、ぜひご活用ください。




