AIを「使う」から、AIが「裏で動く」へ。9名で約160社を支える、ソルビス税理士法人の次世代型業務設計

ソルビス税理士法人代表の境裕介氏

ソルビス税理士法人

代表社員・税理士 境 裕介様

事務所規模:9名

所在地:大阪府大阪市
課題:業務効率化、組織マネジメント

2024年7月の独立開業を経て、2025年1月に設立されたソルビス税理士法人。同法人は、AIをフル活用する小規模事業者向けサービスと、人間の判断力・コミュニケーション力を重視する中堅・大規模事業者向けサービスを展開しています。2026年8月1日時点で、代表を含む9名が約160社を支援。その成長を支えるのは、AIを単発の便利ツールとして使うのではなく、freee会計・freee申告、API、freee-mcpを業務設計の中に組み込む発想です。代表の境裕介さんに、AI時代の税理士事務所づくりと、freeeを基盤に描く将来像を伺いました。

導入前の課題

  • 顧問料の負担が難しい小規模事業者にも、持続可能な価格で税務支援を届ける仕組みが必要だった

  • スタッフの増加に伴い、業務管理と業務フローの標準化を一から整える必要があった

  • 人の作業量を増やさずに顧問先数を拡大できる、生産性の高い事務所モデルを構築したかった

 

freee導入の決め手

  • 公開されているAPIが多く、AIや外部システムと組み合わせた業務設計を行いやすいこと

  • freee会計からfreee申告まで、会計・税務の業務を一気通貫でつなぎやすいこと

 

導入後の効果

  • freeeとAIを組み合わせた業務設計により、従来型の税理士事務所と比べて業務時間を約10分の1にできているという手応え
  • 資料依頼・回収・判定・リネーム・格納・未提出時のリマインドまで、一連の処理を自動化
  • 9名で約160社を支援する体制を構築し、4〜5年で年商10億円を50名で実現する目標を設定

AIの最先端と、人間にしか出せない価値を両立する

――まず、ソルビス税理士法人の特徴を教えてください。

境裕介さん(以下、境):一言で表すなら、AIの最先端を活用すると同時に、AIに代替されない人間力でも勝負する税理士事務所です。

当法人の事業は大きく二つあります。一つは、小規模事業者向けの「みんなの税務顧問」。こちらはAIをフルに活用し、人が関与する部分を減らすことで、できる限り低価格でサービスを提供しています。もう一つは、中堅・大規模事業者向けの税務顧問です。

AIも活用しますが、こちらは人間が対応し、判断力やコミュニケーション力によって価値を届けています。

AI活用と人間が担う価値の明確化について語る境氏

――小規模事業者向けと中堅・大規模事業者向けでは、提供の仕方が異なるのですね。

境:はい。規模の小さい事業者は、会計・税務処理の選択肢が比較的限られるため、AIやシステムで自動化しやすい領域です。

一方、企業規模が大きくなれば、個別の判断やきめ細かな対応が必要になります。

税務という括りは同じでも、届ける価値と、その届け方が違います。AIに任せる部分と、人が担う部分を明確に分けることが重要だと考えています。

“支援を受けにくかった層”に、AIで税務サービスを届ける

―― 小規模事業者向けのサービスを始めた背景を教えてください。

境:独立後に感じたのは、年商1,000万円以下の小規模事業者の中には、顧問料を負担する余裕がなく、会計業界の支援を受けにくい方が多いということでした。

また、税理士事務所からしても単価が合わないため顧問を受けたくないという想いがあり、小規模事業者は見捨てられていたという現状を目の当たりにしていました。

そこで、従来のやり方では工数が合わなくても、AIを使えば支援できるのではないか。日本の事業者の大半を占める小規模事業者に対して低価格で税務サービスを提供し、本業に専念して成長していただければ、日本経済にもプラスになる。そうした社会的な意義も感じて、サービスを始めました。

小規模事業者向けサービス立ち上げの背景や独立・法人化への思いを語る境氏

――独立と法人化には、どのような思いがあったのでしょうか?

境:税務だけでなく、事業者や経営者の課題をさまざまな面から支援したいという思いで、2024年7月に独立しました。

その思いは法人化しても変わっていません。ただ、お客様の課題に適切な解決策を提供するには、私たち自身に総合力が必要です。組織化を進めるため、2025年1月に税理士法人を設立しました。

『ソルビス』には、ソリューションをアドバイスするという意味と、太陽のようにお客様のビジョンを照らすという意味を込めています。税務・会計は手段の一つ。私たちが目指すのは、『お客様の課題を解決し、未来を照らす』ことです。

決め手はAPIと一気通貫性。AIとつながる会計基盤へ

freeeのAPI公開量や会計から申告までの一気通貫性を評価する境氏

――――freeeを導入した理由を教えてください。

境:小規模のお客様を数多く支援するには、AIが必要だと考えました。その前提で会計ソフトを検討したときに、AIで操作しやすく、外部の仕組みともつなぎやすいのがfreeeだと思ったんです。

特に大きかったのは、公開されているAPIの多さです。導入後はfreee-mcpも公開され、AIと会計データをつなぐ選択肢が広がった点は、非常に良かったと感じています。

――プロダクトの設計面では、どのような点を評価していますか?

境:freeeはプロダクト同士の結びつきが強く、会計から申告まで一気通貫で業務を進めやすいと感じています。

現時点ですべての期待が実現しているということではありませんが、利用できる機能には満足していますし、申告領域も含めてさらに連携が広がることを期待しています。

――クラウド型であることによる効果もありますか?

境:顧問先様と同じ会計データをリアルタイムで見られるのは大きいですね。面談でも、同じ画面を見ながら確認できます。

また、口座連携なども含め、オンプレミス型のソフトと比べて使いやすいと感じています。会計ソフトは事務所と顧問先様をつなぐ大きなパイプラインです。その意味でfreeeは、税理士実務になくてはならないサービスの一つだと思っています。

経験者をあえて採らず、“新しい当たり前”を一からつくる

未経験者の採用やクラウド前提の業務フロー構築について語る境氏

――freeeの導入はスムーズに進みましたか?

境:従来型の会計ソフトとは設計思想や操作感が異なるので、最初はスタッフのキャッチアップに時間がかかった部分はあります。

ただ、当法人のスタッフは全員、会計事務所での実務経験がありません。私たちは、あえて経験者を採用していないんです。

――なぜ、未経験者を採用しているのでしょうか?

境:「前の事務所ではこうだった」「普通の会計事務所はこうする」という先入観を持ち込まず、一から新しい業務フローをつくりたいからです。

経験者の知見が役立つ場面ももちろんありますが、私たちが目指すモデルでは、過去のやり方がノイズになることもあります。まっさらな状態から、AIとクラウドを前提にした業務を組み立てています。

――スタッフの育成はどのように行っていますか?

境:freeeの「一週間チャレンジ」は全員に受講してもらっています。加えて、freee会計エキスパート、上級エキスパート、freee人事労務エキスパートの試験にも取り組んでもらっています。

顧問先様への案内も、スタッフが作成したオンラインの手順書を見ていただく方式にし、説明業務そのものも標準化しています。

プロンプトを入力しない。AIが“裏で動く”状態をつくる

業務フローの中にAIを組み込む運用の重要性について語る境氏

――AIは、いつ頃から税務業務に取り入れ始めましたか?

境:2024年7月に独立して、比較的すぐに使い始めました。

当時は税理士業界で本格的にAIを使っている人がまだ少ない印象だったので、むしろフルベットしようと考えたんです。

定型業務や要約はAIの方が速く、100%ではなくても一定の精度で処理できます。税理士業務には、そうした作業が多くあります。まずは試しながら、『会計事務所の何が楽になるのか』を常に考えてきました。

――現在はどのように業務へ組み込んでいるのでしょうか?

境:目指しているのは、スタッフがAIを使っていると意識しないまま、裏側でAIが自動的に動いている状態です。

毎回生成AIを開き、プロンプトを入力する運用ではありません。業務フローそのものにAIを組み込むんです。AI専属のスタッフが新しい技術を早く試し、何ができるか、どう使うかを検証して、事務所全体へ展開しています。

――具体的な活用例を教えてください。

境:たとえば、顧問先様とのコミュニケーションです。

税理士事務所にとって、メールやチャットなど複数の窓口を横断するコミュニケーションコストは非常に大きい。そこで、連絡を一つにまとめるプラットフォームを自社で構築しています。顧問先様から質問が届くと、その時点で回答案が自動生成され、スタッフの手元に届きます。

スタッフがAIに相談して待つのではなく、相談する前に回答案が用意されている状態です。

資料回収を、依頼から未提出リマインドまで自動化

資料回収や受領確認・自動リマインドの仕組み化について語る境氏

―――ほかには、どのような業務を自動化していますか?

境:資料回収も自動化しています。

新たに契約した顧問先様について、どの資料が必要かをAIが判断し、マスターに登録します。すると、提出していただきたい資料と共有フォルダを案内するメールが自動で送られます。

顧問先様が定款や登記事項証明書(謄本)などを保存すると、そのデータをAIが読み取り、ファイル名を変更し、所定のフォルダへ移動し、受領済みのチェックまで行います。未提出の資料があれば、提出されるまでリマインドを続け、これらがすべて自動で動いていきます。

――こうした業務設計で、どの程度の効率化を実感していますか?

境:freeeだけの効果ではなく、freeeとAIを組み合わせた業務フロー全体の効果ですが、AIをあまり活用していない従来型の税理士事務所と比べると、業務時間は約10分の1にできているという手応えがあります。

ただ、理想を100とすれば今はまだ30くらいで、個々のAIシステムというより、生産管理の仕組みや業務設計には、さらに改善の余地があります。

AI導入の順番は「業務設計 → AI活用 → 効率化」

業務設計を踏まえた段階的なAI導入のプロセスについて解説する境氏

――税理士事務所にとって、AI活用は必須になると考えていますか?

境:結論としては必須だと思います。

そろばんの時代に電卓が登場したのと同じで、AIの流れは不可逆的です。今のブームがそのまま続くとは限りませんが、波が引いたあとも潮位は上がっている。

例えば、記帳代行にAIを使うことは今後当たり前になっていくと思いますので、大がかりな活用でなくても、できるところから始めなければ、生産性に大きな差がつくと思います。

――同業の税理士事務所から相談を受けることも多いそうですね。

境:AIに関する相談は非常に多いです。ただ、成果物だけをそのままお渡しすることはしていません。

大切なのは、その事務所の中でAIを使い、改善を続けられる人を育てることだからです。セミナーやワークショップを通じて、内部のAIリテラシーを高める支援をしています。内部で育成するのが難しい場合は、freee Agent Hubのようなサービスを使うことも選択肢になると思います。

――AIを導入する際に、特に重要なことは何でしょうか?

境:AIを使うこと自体が目的になっているケースは少なくありません。しかしAIは、業務を自動化・効率化するための手段です。

先に必要なのは「業務設計」です。現状の業務を分解し、減らせないか、まとめられないか、簡略化できないか、そもそもなくせないかを考える。そのうえで、人・システム・AIのどれが担うかを決めます。

順番は『業務設計→AI活用→効率化』です。会計ソフトの見直しも、その業務設計の一部になります。

年商10億円を100名ではなく50名で。AIで生み出した力を、人の価値へ

ソルビス税理士法人オフィスの看板の横に立つ代表の境裕介氏

――今後、どのような事務所を目指していきますか?

境:小規模事業者向けサービスでは、自動化と効率性をさらに追求し、利益率を高めていきたいと考えています。

一方、中堅・大規模事業者向けでは、人間力がより重要になります。小規模事業者向けサービスで生み出したキャッシュを、優秀な人材への投資につなげ、税理士業界でトップクラスの平均年収を目指したいと考えています。

――中期的な目標を教えてください。

境:4〜5年で年商10億円を目指しています。

従来型の事務所なら100名が必要になる規模かもしれませんが、私たちは50名で達成したい。小規模事業者向けサービスの業務を徹底して効率化し、会計から申告までつながるfreeeを活用することで、その生産性を実現していきたいです。

―――最後に、境さんにとってfreeeとはどのような存在ですか。

境:税理士実務において、なくてはならないサービスの一つです。会計ソフトは、税理士事務所と顧問先様をつなぐ最も大きなパイプラインです。だからこそ、事務所とベンダーが共に成長し、共存共栄していくために欠かせない存在だと思っています。

ソルビス税理士法人

大阪府大阪市

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