「仕組み」で回す事務所へ。札幌の36名大規模事務所がfreeeで手に入れた組織変革

税理士法人中野会計 札幌事務所

代表:能登 和希様

事務所規模:36名
所在地:北海道札幌市
課題:業務効率化、付加価値向上

税理士法人中野会計が目指した「理想の事務所像」は、「人」ではなく「仕組み」が業務を回す事務所でした。
単純な入力や集計業務に人が縛られず、バックオフィスが仕組み化されることで試算表や決算書が自動で作成され、職員はより付加価値の高い業務に集中できる。能登様は、そんな状態を目指して変革に乗り出しました。

従来のやり方では、どうしても付加価値業務に時間をかけられず、スタッフへの十分な還元が難しいと感じていた能登様は、この状況に危機感を抱いていました。
そこでfreeeによる業務効率化を「目的」ではなく、高付加価値業務へ注力するための「手段」と位置づけ、スタッフへの還元につながる好循環を設計。事務所を大きく変えるまでの道のりを伺いました。

従来の会計ソフトの限界と、freee導入のきっかけ

――freee導入以前、事務所が抱えていた課題を教えてください。

能登 和希 様(以下、能登):freeeを導入する前、事務所ではすでに他社のオンプレミス型ソフトで、事務所の業務自動化を進めていました。しかし、私はそこに限界を感じていました。従来の会計ソフトはデータのばらつきや例外処理に弱く、業界で不可欠な「人の判断」を置き換えるのは難しい場面が多かったです。

加えて、最も工数がかかっていたのは資料回収でした。私はDXの第一歩としてペーパーレス化が不可欠だと考えており、freeeのフル活用によって資料の回収・確認の工数を大きく削減できると捉えました。

――freee導入プロジェクトを進める中で、反対の声もあったと聞きました。

能登:従業員数36名という大規模な組織の中で、以前freeeを試した職員から「使いづらい印象があった」という声が残っていたことも事実です。特に紙とオンプレミス型の会計ソフトで長年業務を回してきたベテラン職員からは、これまで培ったノウハウやショートカットが通用しなくなるという声がありました。「今までのやり方で十分効率的なのに、なぜ変える必要があるのか」という率直な疑問や、freee特有の画面操作に戸惑う声も少なくありませんでした。

私は、こうした抵抗は悪意ではなく「チャレンジへの不安」だと受け止めました。自分自身も当初は使いづらいのではないかという先入観がありましたが、freeeの担当者と話す中で、認識のすれ違いによるものだと実感しました。

「十分効率化できているから現状維持」ということに対して決して否定的ではないですが、freeeを活用して業務を回すことが将来価値であり、「前提」になっていくことは積極的に伝えてきました。そんな中、これまで使っていた会計ソフトの値上げが決定し、オンプレミス版の会計ソフトへの「慣れ」に対して多額の追加コストを払う妥当性が所内の論点になり、これが課題から目をそらさず向き合う契機となりました。全員でクラウド会計に取り組む号砲になったことは間違いありません。

逆風を追い風に変えた「少人数の推進チーム」という選択

――能登さんはfreee導入の少人数プロジェクトのリーダーとして動かれたそうですね。その原動力やきっかけとなる体験があったのでしょうか?

能登:元々、他拠点で税理士補助者として8年ほど仕事をしていましたが、あまりの非効率な業界に嫌気が差し、当初は退職を考えていました。早く決算を終わらせたくても重要な書類が手元に届かずに一定期間作業が止まってしまったり、届いたと思ったら違う書類だったり。予定を立ててもその通りに進むことの方が珍しかったです。
顧問先にとっても、本業がある中で書類を探し、会計事務所に持っていき、さらに書類が違うと言われればまた探して…。顧問先も会計事務所も、本業に集中できない一番の要因は資料や情報不足だと感じていました。

freeeをフル活用できれば、こういった業務停滞が生じないと考えています。ファイルボックスによる資料回収で会計事務所へ書類を届ける必要もありませんし、コメント機能で直接仕訳に関する情報の補足も可能です。これがスタンダードになれば、会計事務所のみならず、バックオフィス業界全体が変わるだろうなと思いました。

――他のソフトを使うなどfreee以外にも選択肢がある中で、freeeを検討した決め手はどこにあったのでしょうか?

能登:freeeを検討した最終的な決め手は、freeeの将来価値でした。ファイルボックスによる資料回収、LINE連携、取引の自動登録といった仕組みは同事務所の業務設計と親和性が高く、他では実現しづらいと感じました。加えて、freeeで働く方々がプロダクトに誇りと自信を持ち、伴走してくれるという支援体制が何より心強かったです。

一気に大規模展開するとfreee導入プロジェクトが頓挫しかねないと考え、私は少人数のスモールスタートで「実験する」という設計にしました。従来のソフトを使っていた時代から一緒に取り組んできたスタッフに加え、「学ぶ機会があるなら挑戦したい」という前向きな意思を持つスタッフを推進メンバーに迎え入れました。

少人数でのスタートから、組織全体そして業界全体の変革へ

――少人数のチームから始まった変革は、どのようにして所内に広がっていったのでしょうか。

能登:3名の推進メンバーからスタートした頃、freeeで効率化するための実演型共有会を開催しました。ファイルボックスや自動登録ルール、取引の消し込みなどを実際のfreeeの画面を見せながら共有したことで、「使いづらい」というイメージから「効率化できるのかも?」というイメージに変化したかと思います。

また、所内に広がった最大のきっかけは、顧問先全件の業務設計図を作成したことでした。まず現状の記帳に関するフローを書き出し、担当者と個別面談で理想フローを共創しました。可視化と合意形成を徹底したことで、「freeeなら本当に効率化できる」という実感が所内に広まっていったのです。

業務設計図での個別面談後に「freeeを導入したいから提案して欲しい」「freeeを導入するので初期設定をお願いしたい」という声が増えたのをきっかけに推進メンバーを増員し、今は5名体制で導入や初期設定の対応をしています。この変革は、未経験者の早期戦力化にも貢献すると思っています。今では、全員でfreee会計エキスパート試験を取得し、設計思想と基本機能を理解・共通言語化することにしています。freee会計のデモ用アカウントで手を動かして学ぶ環境も整備したため、未経験者でも短期間で実務に乗りやすく、教える側の負担も明確に下がることになります。

――能登さんがfreee導入を進められた札幌事務所の、他の拠点にはない特徴や課題はありますか。

能登:札幌事務所は、職員の年齢層が若いことが特徴だと思います。札幌は他の拠点と比較して人口も多く、新卒の採用がしやすいためです。

課題は業務の属人化ですね。税理士業界は税法の知識だけで仕事ができると思われがちですが、実際の実務では会社法や民法、労働基準法についても一定の知識が必要になる場面が非常に多いです。現場で初めて経験することで学ぶことも多いのですが、そういった情報が共有されず、「この人しかできない」という属人化を招いていました。これは顧問先のことについても同様で、担当者が退職する際には伝える情報が多く、引き継ぎに時間がかかってしまうのです。

業界全体の課題でもあると思いますが、これからは税法をはじめとする法律知識に加えて、クラウドやAIに関する知識も当然のように求められる業界になります。時代が変わっていく中で、今の若手はインプットが多すぎて大変だと思いますが、チャレンジを恐れずに頑張ってほしいです。

「仕組み」が生み出す効率化のその先へ。未来の事務所像とメッセージ

――札幌事務所でのfreee導入成功モデルを、今後は全拠点へ展開していくと聞きました。この変革を通じて、事務所の収益構造やサービス提供のあり方はどのように変わっていくのでしょうか。

能登:従来は決算・申告までの作業に多大な工数を割き、顧問先の効率化を十分に支援できませんでした。freeeを核に会計・労務・請求などバックオフィス全体をつなげば、弊所の資料回収が楽になるだけでなく、顧問先も本業に集中させてあげることができます。

今後、生き残る事務所は納税支援にとどまらず、その前段の業務設計・運用まで伴走することが付加価値になるはずです。5〜10年後には、顧問料の中身が「作業対価」から「仕組みと運用の価値」へシフトし、収益構造もよりストック性の高いものへ変わっていくと見ています。

――最後に、変革に悩む全国の税理士・会計事務所の皆さまへ、能登さんからメッセージをお願いします。

能登:我々もまだまだ走り始めたばかりですが、変革に痛みは付きものです。しかし、最初は少数精鋭で小さく始め、見える成果を積み上げて仲間を増やすのが現実的です。辛くなったら、理想の状態を“妄想”してモチベーションを保つ。自分たちを信じて一歩目を踏み出せば、風向きは必ず変わります。

税理士法人中野会計 札幌事務所

北海道札幌市

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