税理士のための電子帳簿保存法ガイド|顧問先へのアドバイスと事務所対応

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電子帳簿保存法(以下、電帳法)への対応は、全ての事業者にとって重要な課題と言えます。顧問先から寄せられる多様な質問に対し、税理士として的確なアドバイスが求められることも多いです。また、法令対応を機に顧問先の業務効率化まで支援することで、信頼関係をさらに深めることもできます。

本記事では、改めて電帳法の基本から改正の重要ポイント、顧問先への導入支援、税理士事務所自身の対応まで、実務に直結する情報を解説していきます。

目次[非表示]

  1. 1.税理士が押さえるべき電子帳簿保存法の基本
    1. 1.1.3つの保存区分
    2. 1.2.特に注意すべき「電子取引」の範囲
    3. 1.3.優良な電子帳簿に係る過少申告加算税の軽減措置
  2. 2.令和3年度改正の重要ポイントと顧問先への影響
    1. 2.1.事前承認制度の廃止とスキャナ保存要件の緩和
    2. 2.2.電子取引データの電子保存義務化
    3. 2.3.不正行為に対する重加算税の加重措置
  3. 3.顧問先への電帳法対応・導入支援フロー
    1. 3.1.Step1: 現状把握と課題のヒアリング
    2. 3.2.Step2: 保存要件を満たすための選択肢を提示
    3. 3.3.Step3: システム選定のチェックリスト
    4. 3.4.Step4: 事務処理規程の作成支援と運用定着
  4. 4.税理士事務所自身の電帳法対応と業務効率化
    1. 4.1.事務所における電子取引データの保存
    2. 4.2.顧問先からのデータ受領フローのデジタル化
    3. 4.3.ペーパーレス化によるコスト削減と生産性向上
  5. 5.電帳法対応を、顧問先との関係を深化させる好機に

税理士が押さえるべき電子帳簿保存法の基本

顧問先に正確な情報を提供するため、まずは電帳法の全体像を改めて整理することが重要です。

3つの保存区分

電帳法における電子データの保存方法は、次の3つに区分されます。それぞれの対象と要件を理解し、顧問先の状況に合わせて説明できるようにしましょう。(※1)

  • 電子帳簿等保存

会計ソフト等で電子的に作成した国税関係帳簿(仕訳帳、総勘定元帳など)や書類を、データのまま保存する方法です。

  • スキャナ保存

紙で受領・作成した国税関係書類(請求書、領収書など)を、スキャナ等で読み取って画像データとして保存する方法です。

  • 電子取引

EDI取引やメールでの請求書授受など、取引情報を電子的に行う取引のデータを保存する方法です。


(※1)国税庁|電子帳簿保存法の概要
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/02.htm

特に注意すべき「電子取引」の範囲

3つの区分のうち、特に注意が必要なのが「電子取引」です。電子帳簿等保存やスキャナ保存が任意であるのに対し、電子取引データの電子保存は、全ての事業者に義務付けられています。

具体的には、以下のようなケースが該当します。

  • 電子メールで受領した請求書PDF
  • Webサイトからダウンロードした請求書データ
  • クラウドサービスを利用した請求書発行・受領
  • EDIシステムを利用した取引

これらの取引データを紙に印刷して保存することは認められず、必ず電子データのまま要件に従って保存する必要がある点を明確に伝えることが大切です。

優良な電子帳簿に係る過少申告加算税の軽減措置

電帳法対応にはメリットもあります。その一つが「優良な電子帳簿に係る過少申告加算税の軽減措置」です。(※2)


一定の要件を満たす「優良な電子帳簿」について事前に届出書を提出していれば、その帳簿に関して申告漏れがあった場合に課される過少申告加算税が5%軽減されます。顧問先のDX推進のインセンティブとして提案できる制度です。


(※2)国税庁|優良な電子帳簿の要件
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/05.htm

令和3年度改正の重要ポイントと顧問先への影響

令和3年度の税制改正で、電帳法は大幅に見直されました。顧問先への説明という視点で、改正のポイントを解説します。

事前承認制度の廃止とスキャナ保存要件の緩和

これまで電子帳簿等保存やスキャナ保存の導入に必要だった税務署長の「事前承認制度」が廃止されました。これにより、事業者は厳格な承認手続きを経ることなく電子保存を開始でき、導入ハードルが大きく下がりました。

また、スキャナ保存においてもタイムスタンプ要件が緩和されるなど、手続きが簡素化されています。これらの緩和点は、電子化に踏み切れなかった顧問先への再提案のきっかけになります。

電子取引データの電子保存義務化

改正内容で最も影響が大きいのが、電子取引データの電子保存義務化です。


令和5年12月31日で宥恕措置は終了しましたが、現在は新たな「猶予措置」が設けられています。①相当の理由があると税務署長が認め、②税務調査時にデータのダウンロードと書面提示の求めに応じられれば、他の保存要件を満たさずに電子データを保存できます。(※3)


ただし、これはあくまで猶予であり、原則対応が求められます。安易に猶予措置に頼らず、早期の体制構築が重要であることを伝えましょう。


(※3)国税庁|電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】問79(PDF62/72)
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/03-6.pdf

不正行為に対する重加算税の加重措置

コンプライアンスの観点から、罰則強化も必ず伝えるべき点です。電子データに関して隠蔽や仮装などの不正があった場合、その申告漏れ等に対する重加算税がさらに10%加重されます。顧問先を守るためにも、このリスクを明確に伝え、適正な体制構築を促すことが重要です。


すべての企業で対応する義務のある「電子取引」のデータ保存については特に注意しなければなりません。


なお、令和7年度税制改正において、一定要件を満たすシステム利用などを条件に、電子取引における重加算税の加重措置が免除されることとなりました。今後はこうしたシステムの導入も、顧問先を守る一つの提案となるでしょう。


令和9年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税が対象となります。


(※4)国税庁|令和7年度税制改正による電⼦帳簿等保存制度の⾒直しの概要
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0025003-097_01.pdf

顧問先への電帳法対応・導入支援フロー

顧問先の電帳法への対応支援も税理士として重要な役割です。ここからは電帳法の具体的な導入支援のフローを、電子取引のデータ保存を例に解説します。

Step1: 現状把握と課題のヒアリング

まず、顧問先の現状を正確に把握します。各社の実情に合わせたアドバイスのため、以下の点をヒアリングしましょう。

  • 扱っている書類の種類(紙かデータか)
  • 経理担当者のITリテラシー
  • 現在の経理業務フローと課題
  • 対応にかけられる予算や人員

Step2: 保存要件を満たすための選択肢を提示

ヒアリングに基づき、顧問先に合った対応方法を提示します。システムを導入する方法と、事務処理規程を定めて運用する方法があります。

  • システム導入

電帳法の保存要件を満たすシステムを導入する方法です。該当するシステムを選択することで、真実性の要件はもちろん、可視性の要件の一つ「検索機能の確保」も満たすことができます。

メリット:法的要件の確実な充足、業務効率化の実現

デメリット:導入・運用コストの増大

  • 事務処理規程の運用

真実性の要件を事務処理規程の策定とその運用により満たす方法です。低コストで取り組める反面、検索機能の確保等の要件を満たすための支援を別途行う必要があります。

メリット:低コストで開始可能

デメリット:手作業が多い(検索機能の確保への対応等)、人的ミスや形骸化のリスクあり

それぞれの長所・短所を説明し、顧問先が最適な方法を選べるようサポートします。

Step3: システム選定のチェックリスト

システム導入を選択した顧問先には、選定支援も重要です。税理士の視点で、以下の点を確認しましょう。

  • 既存の会計ソフトと連携できるか
  • 検索要件(取引年月日・金額・取引先)を満たせるか
  • JIIMA認証(※)を取得しているか
  • 操作は直感的で分かりやすいか
  • 導入後のサポート体制は充実しているか

(※)JIIMA認証:市販のソフトウェア等が電帳法の要件を満たすかを、公益社団法人日本文書情報マネジメント協会が認証する制度。

Step4: 事務処理規程の作成支援と運用定着

事務処理規程で対応する場合、国税庁公開のサンプルを基に作成を支援すると効率的です。(※5)
重要なのは、規程を正しく運用し続けることです。ファイル名の付け方や保存場所のルールを具体的に定め、従業員への周知や定期的な運用確認の重要性を伝えましょう。


(※5)国税庁|参考資料(各種規程等のサンプル)
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/0021006-031.htm

税理士事務所自身の電帳法対応と業務効率化

顧問先へのアドバイスと並行し、税理士事務所自身も電帳法に対応する必要があります。これを事務所のDXを推進する好機と捉えましょう。

事務所における電子取引データの保存

自事務所で発生する電子取引を洗い出しましょう。

  • ソフトウェアのライセンス料やクラウドサービスの利用料
  • インターネット広告費
  • 通販で購入した事務用品の領収書

これらのデータは、検索機能(取引年月日・金額・取引先)を確保して保存しなければなりません。電子取引に対応した保存システムで対応する方法が確実です。システム等で対応できない場合は、手動で「20241025_(株)XX商事_110000」のようなファイル名ルールを定め、フォルダ分けして管理する方法もあります。

顧問先からのデータ受領フローのデジタル化

電帳法対応は、顧問先との資料のやり取りを見直す絶好の機会です。紙で受領していた証憑を、クラウドストレージ等を活用したデジタル受領に切り替えることで、双方の業務が大幅に効率化され、事務所のペーパーレス化も加速します。

ペーパーレス化によるコスト削減と生産性向上

法令対応を「投資」と捉えることで、事務所経営にプラスの効果が生まれます。ペーパーレス化は、紙や印刷、保管スペースのコストを削減します。また、データ検索が容易になることで生産性が向上し、テレワークの推進にも繋がります。

電帳法対応を、顧問先との関係を深化させる好機に

電帳法への対応は、単なる法令遵守義務ではありません。顧問先の経理業務の課題を発見し、デジタル化による業務改善を提案することで、より付加価値の高いサービスを提供する絶好の機会となります。この変化を前向きに捉え、顧問先と共に成長していくため、まずは自事務所の対応から見直してみてはいかがでしょうか。

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(この記事は、生成AIによって作成された原稿を基に、編集者が内容の正確性・構成を精査し、最終的な調整を行っています。)

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