税理士に将来性はある?10年後も活躍し続ける4つのコツを紹介
「税理士には将来性がない」という言葉を最近、聞くようになりました。なぜでしょうか。そして実際のところ、どうなのでしょうか。今回「税理士に将来性はない」と言われる理由を考えるとともに、税理士が活躍するためのコツをお伝えします。
目次[非表示]
- 1.「税理士に将来性がない」と言われる理由
- 1.1.少子高齢化
- 1.2.AIの進化・クラウドサービスの普及
- 1.3.税務サービスの無料化・低価格化
- 2.それでも「税理士には将来性がある」と言えるワケ
- 2.1.税務の複雑性・専門性
- 2.2.専門家に頼む安心感
- 2.3.差別化しやすい
- 3.税理士が10年後も活躍し続けるための4つのコツ
- 3.1.「税理士+α」を意識する
- 3.2.勉強し続ける
- 3.3.コミュニケーション能力をみがく
- 3.4.チャレンジし続ける
- 4.まとめ
「税理士に将来性がない」と言われる理由
平成の半ばまで、税理士は「一度なったら一生安泰」と言われるような国家資格でした。しかし近年は税理士試験の受験者数の減少から分かる通り、その人気が陰りを見せています。「税理士になっても将来性はない」と言われていることが一因かもしれません。
出典:「国税庁 税理士試験結果(平成27年度から令和4年度)」
「税理士に将来性がない」と言われる背景には、次の3つがあると見られます。
少子高齢化
日本の人口は平成20年以降、減少に転じています。同時に目立つのが少子高齢化です。子どもの数は減る一方ですが、65歳以上の高齢者の数は増加し続けています。
出典:総務省統計局 総人口及び総人口に占める0~14歳、65歳以上及び75歳以上人口の割合の推移(平成元年~30年)
「子どもの数が減る」ということは、現役で働く人の数が少なくなることです。現役世代の数が減少すれば、経済活動は縮小します。「モノやサービスを消費する」「投資する」「起業する」「事業を拡大する」といった行為は、資金を継続的に稼げる現役世代によって行われているからです。
一方、税務は個人や法人の経済活動にかかわるものです。「日本の経済活動の縮小で税理士の需要は下がる」と考えられてもおかしくありません。
AIの進化・クラウドサービスの普及
インターネットが浸透して以後、多くの技術開発が行われました。税理士業界で最近注目されているのが、AI(人口知能)とクラウドサービスです。
AIにより単純作業の自動化が可能になり、クラウドサービスの普及で顧客との情報共有をすぐ行えるようになっています。結果、税務や会計にかかる時間的・経済的コストを圧縮することが可能となりました。
反面、こういったテクノロジーが、記帳代行などの税理士の業務を奪うこともあります。税理士に頼まなくても、自分で処理できるからです。
税務サービスの無料化・低価格化
以前は税理士業務の報酬が税理士法で定められていました。しかし、平成13年の税理士法改正で規定が削除されました。現在は自由に価格設定ができます。一部では低価格での税務サービスが提供されるほどです。
また、最近はオンラインメディアにより無料で税務の知識が得られます。ChatGPTで確認する人もいるようです。一般の人でも使いやすい会計ソフトの存在を踏まえると「税理士がいなくても確定申告はできる」「自分で調べて対処すれば安くつく」と考えられても不思議ではありません。
それでも「税理士には将来性がある」と言えるワケ
こういった事情があっても、税理士の業務には将来性があります。次の3つが理由です。
税務の複雑性・専門性
個人・法人の税務・会計の業務は10年前より難しくなりました。近年の税制改正で税法が複雑になったからです。
令和2年分以降、基礎控除などの控除額の改正で所得税の計算がややこしくなりました。令和元年10月に消費税は10%・8%の複数税率になりましたが、これに加えて令和5年10月からインボイス制度が開始します。注意すべきポイントが分かっていないと、会計の入力作業や確定申告でミスをしてしまいます。
この他、相続税や贈与税も難解です。オンラインで無料の知識は得てもどう使ったらいいか、一般の人には分かりません。正しく申告や記帳を行い、顧客ごとの最適解を出すなら、専門知識を備えた税理士が不可欠です。
なお、税理士の資格は税理士法によって裏付けられた国家資格です。脱税相談は懲戒の対象となりますし、品位を下げる行為や名義貸しも禁じられています。年間36時間、研修を受けなくてはなりません。こういった点でも、税理士の専門家としての信頼性は保証されているのです。
専門家に頼む安心感
税務・会計の処理が格安のITツールで可能になったといっても、大丈夫とは言い切れません。一般の人は、税務や会計を深く理解しているわけではないからです。実際、自分で入力できるとしても、あえて税理士に依頼する人が一定数います。
「調べたりするのに時間を使うなら専門家の税理士に依頼した方がラク」
「作業を税理士に頼めば安心して本業に集中できる」
と考えるからです。
差別化しやすい
最近の税理士は、税務申告や記帳代行に限らず多岐にわたって活躍しています。
経済活動の変化と多様化に伴い、専門分野に特化した税理士が増えてきました。相続や不動産投資の対策ニーズを行う資産税専門の税理士や、海外取引に対応する国際税務専門の税理士などです。事業承継や組織再編など、難易度の高い業務を積極的に行う税理士もいます。
また、ExcelやRPAを駆使して顧客の業務効率化に貢献する税理士も増えています。AIやクラウドサービスがあるからといって避けるのではなく、むしろ積極的に取りこんで顧客サービスにつなげているのです。この他、講演やセミナー、執筆を行う税理士も増えています。
単一業務をめぐっての競争だと過酷です。しかし、差別化を図れば勝ち残れます。そして最近の税理士業界は、差別化しやすい環境にあると言えます。多様化を認める雰囲気が醸成されてきたからです。
税理士が10年後も活躍し続けるための4つのコツ
税理士となって長きにわたり活躍するためには、次の4つが必要だと見られます。
「税理士+α」を意識する
税務申告や会計記帳を行うだけでなく「+α」となる強みがあるといいでしょう。集客しやすいだけでなく、紹介されやすくなります。
例としては「資産税特化」「業務効率化に強い」「業績アップに強い」などがあります。「『+α』になるほどの何かがない」としても、業務をていねいに行えば強みとなります。ていねいに業務を行うのは、誰でもできるものではないからです。そして、ていねいさが顧客との信頼関係を作ります。
勉強し続ける
複雑な税制に対応し、専門性をみがくには、不断の勉強が欠かせません。毎年の税制改正や税法といった税務の勉強がまず必要ですが、それぞれの得意分野に必要な知識のブラッシュアップも意識しておきたいところです。
コミュニケーション能力をみがく
知識や専門性があっても、コミュニケーション能力がなければ活用できません。税理士業務は対人業務であり、必要なことを顧客に伝えなければお金にならないからです。ただ、コミュニケーション能力は、顧客の気持ちになって考え、ていねいに繰り返していけば、自然とみがかれていきます。
チャレンジし続ける
開業当初は挑戦し続けても、事業が安定したり年を取ったりすると気がゆるみます。しかし、そこで成長が止まってしまうと業績が上がらなくなったりトラブルを招いたりするおそれが生じます。時流を読み、次なる一手を打とうとする姿勢が活躍し続ける秘訣です。
まとめ
テクノロジーの進化や経済状況の変化があっても、経済活動が完全にストップしない限り、税理士に将来性はあります。何より、税理士資格は税理士法に裏付けられた国家資格です。信頼性の高さの点から考えても、今後、税理士の仕事がなくなることはないでしょう。