税理士になるには?資格取得の方法と受験要件の緩和について解説
税理士になるには税理士試験の合格だけでは足りません。他にも条件があります。また、税理士試験を受験する以外にも税理士になる方法も。この記事では、税理士になるための方法と令和5年度からの受験資格の緩和についてお伝えします。
目次[非表示]
- 1.税理士になるための資格取得方法4つ
- 1.1.1.税理士試験の合格+実務経験
- 1.2.2.税理士試験の一部合格+大学院+実務経験
- 1.3.3.弁護士・公認会計士
- 1.4.4.税理士試験の免除
- 2.税理士になるために必要な試験合格とは
- 3.令和5年度から緩和された税理士試験の受験資格とは
- 4.税理士になるための実務経験とは
- 5.まとめ
税理士になるための資格取得方法4つ
税理士として資格を取得し、登録して活動するには、主に次の4つの選択肢があります。なお、民間人が税理士になる方法として一般に知られているのは1と2です。
1.税理士試験の合格+実務経験
1つ目は税理士試験に合格して、2年以上の実務経験を積むことです。「税理士試験に合格する」ということは、会計科目2科目、税法科目3科目に合格することを言います。税理士試験の合格者となるだけでなく、会計事務所などで実務経験を2年以上積まないと、税理士として登録できません。
2.税理士試験の一部合格+大学院+実務経験
税理士試験の勉強は長丁場になりがちです。中には「早く資格を取得して登録したい」という人もいるかと思います。そういう人の場合、大学院で会計科目か税法科目の内の一部を取得することで、税理士試験が免除される方法があります。ただし「大学院で全科目を取得する」ということはできません。税理士試験で3~4科目を取得する必要があります。この他「実務経験2年以上」が税理士登録の条件となります。
3.弁護士・公認会計士
弁護士あるいは公認会計士も税理士として登録できます。この2つの資格者については、登録していなくても登録する資格を有していればよいとされています。実務経験2年以上も要求されません。ただし、公認会計士については実務補習のうち、財務省令で定める税法に関する研修を修了していることが求められます。
4.税理士試験の免除
この他、次のような条件に当てはまると、税理士試験の税法科目あるいは会計科目の一方か両方が免除されます。
大学等で会計学あるいは税法に属する科目の教授・準教授・講師のいずれかの職に3年以上いた、あるいは税法科目を研究して博士号を取得した
税務署などの官公署で国税や地方税などの業務に一定期間以上従事していた
詳細な条件は税理士法第8条に書かれています。税務署などに長期間勤めた職員が退職後に登録して税理士になるケースがありますが、これはこの制度によるものです。
税理士になるために必要な試験合格とは
税理士になるには、会計科目と税法科目それぞれに一定科目数以上合格しなくてはなりません。いずれの科目も「60点以上取れば合格」とされていますが、配点は明らかになっていません。例年、1科目あたりの合格率は10~20%程度となっています。会計科目と税法科目の詳細は、次の通りです。
会計科目
会計科目には、簿記論と財務諸表論があります。必修科目なので、両方とも合格しなくてはなりません。なお、会計科目の両方あるいは一部につき、大学院に通って一定以上の成績を修めることで免除とすることも可能です。
税法科目
税法科目には、次のようなものがあります。この中の3つの科目に合格することが必要です。ただし、細かい条件があります。
- 所得税法
法人税法
相続税法
消費税法または酒税法
国税徴収法
住民税または事業税
固定資産税
このうち、所得税法と法人税法は選択必修科目です。この2つの両方、あるいはどちらか一方には必ず合格しなくてはなりません。
残りの科目は他の税法科目から選択して受験します。所得税法と法人税法の両方に合格したのなら、1科目、どちらか一方に合格したのなら2科目を受験して合格すればよいのです。ただし、次の組み合わせの両方を受験することはできません。
- 消費税法・酒税法
- 住民税・事業税
つまり「消費税法に合格した翌年に酒税法を受験する」といったことはできないわけです。なお、税法科目のうち1科目あるいは2科目を大学院で一定以上の成績を修めることで免除とすることもできます。
令和5年度から緩和された税理士試験の受験資格とは
税理士試験は誰でも受けられるものではありません。一定以上の受験資格があります。ただし、令和4年度税制改正でかなり緩和されました。次の通りです。
会計科目
会計科目である簿記論と財務諸表論については、令和5年度の税理士試験から受験資格がなくなりました。大学1年生や高校生でも受験できます。
税法科目
税法科目は会計科目と違い、受験資格があります。学識・資格・職歴それぞれの区分のうちの条件をどれか一つ、満たさないといけません。具体的には次のようになっています。
学識による受験資格
- 大学または短大の卒業者で、社会科学に属する科目を1科目以上履修した者
- 大学3年次以上で、社会科学に属する科目を1科目以上含む62単位以上を取得した者
- 一定の専修学校の専門課程を修了した者で、社会科学に属する科目を1科目以上履修した者
- 司法試験合格者
- 公認会計士試験の短答式試験に合格した者(平成18年度以降の合格者に限られます。)
令和4年度税制改正で変わったのは、下線の部分です。令和4年度の税理士試験までは「法律学または経済学に属する科目」となっていました。しかし、令和5年度の税理士試験から社会科学に属する科目となりました。
この社会科学に属する科目は、法律学または経済学に属する科目を含めた幅広い分野となっています(下図参照)。
資格による受験資格
資格による受験資格は「日商簿記検定1級合格者」か「全経簿記検定上級合格者」です。全経簿記検定上級合格者については、昭和58年度以降の合格者に限られます。
職歴による受験資格
- 法人または事業を行う個人の会計に関する事務に2年以上従事した者
- 銀行・信託会社・保険会社等において、資金の貸付・運用に関する事務に2年以上従事した者
- 税理士・弁護士・公認会計士等の業務の補助事務に2年以上従事した者
税理士になるための実務経験とは
税理士になるためにはもう1つ、必要なことがあります。「実務経験2年以上」です。これは、税理士試験に合格した人か、税理士試験の科目を大学院で一定以上の成績を修めて免除となった人のみとなります。実務経験2年以上については、次のような細かい決まりがあります。
- 租税または会計に関する事務に従事した期間が通算して2年以上あること
- 実務経験を積むタイミングは、税理士試験の合格や科目免除の前後を問わない(いつ実務経験を積んでもよい)
- 会計に関する事務は、簿記会計の知識を必要とする記帳業務や決算仕訳業務をいい、特別な判断を要しない機械的な事務は除く
- 「2年以上」という期間は原則として通常の勤務時間内における期間を暦に従って計算する
- 会社の総務のように租税・会計以外の業務が含まれる業務や、アルバイトなどの非正規雇用などの場合には積み上げ計算で実務経験を判定する
- 上記の積上げ計算は「1日の従事時間は7時間以内」「1月の従事時間は154時間以内」「2年相当の従事時間は3696時間(154時間×24月)以内」を基準に行う
まとめ
今回は税理士になるにはどうしたらよいか、についてお伝えしました。令和4年度税制改正により、以前よりも受験のハードルは下がりました。しかし、税理士になるまでのプロセスそれ自体が簡単になったわけではありません。実務経験にせよ試験勉強にせよ、また大学院免除を目指すにせよ、それなりに時間と労力がかかります。もし税理士になりたいと考えているのなら、早めにスタートを切った方がいいかもしれません。