公認会計士と税理士、どう違う?業務や年収、試験の内容から向く人・向かない人を比較
「公認会計士と税理士、どう違うの?」そう感じる方は多いでしょう。どちらも会計業界の国家資格です。一見、違いは分かりません。しかし実際の業務や試験の内容は大きく異なります。この記事では、公認会計士と税理士の違いをさまざまな角度で比較し、向き・不向きについても解説します。
目次[非表示]
- 1.公認会計士と税理士の違いを数値で確認
- 2.違い①業務内容
- 3.違い②試験内容
- 4.公認会計士と税理士、どちらに向いている?
- 4.1.公認会計士に向いている人
- 4.2.税理士に向いている人
- 5.まとめ:公認会計士と税理士の違い
公認会計士と税理士の違いを数値で確認
公認会計士と税理士は、一見似ています。どちらも会計に関連する資格であり、決算業務に携わります。簿記や法律の知識も必要です。しかし、比較するといろいろ異なります。
最初に、年収・月収や難易度、試験合格までにかかる時間などを数値で比較してみましょう。
年収・月収
厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」を見てみましょう。
公認会計士の平均年収は全国で746.6万円となっています。なお、ハローワークの求人統計データを見ると、求人賃金は月額39万円となっています。ただ、実際には大手監査法人で働くか、中小の監査法人で働くかで違いがあるようです。一般に、中小の監査法人の方が年収は高くなる傾向にあります。
同サイトでの税理士の方も見てみましょう。こちらも全国の平均年収は746.6万円ですが、ハローワークでの求人賃金は公認会計士よりやや低く、月額33.1万円となっています。こちらもどこで働くかによって違いがあります。大手の税理士法人ほど年収が高くなりますが、中小の税理士法人や個人の税理士事務所だと「年収は300万円から」というところもあります。
就業形態
先ほどと同じく、厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」で確認しましょう。公認会計士の就業形態を見ると、正規の職員・従業員が圧倒的に多く、75.9%となっています。自営・フリーランスは25.9%に過ぎません。一方、税理士は正規の職員・従業員の割合が53.4%、自営・フリーランスの割合は39.7%となっており、公認会計士に比べて独立を選ぶ割合が高くなっています。
難易度
公認会計士試験は、短答式試験に合格した後、論文式試験を受験し合格して初めて試験合格となります。金融庁が公表している「令和4年公認会計士試験の合格発表の概要について」を見ると、論文式試験の合格率は7.7%となっています。
一方、税理士試験は基本的に5科目すべてに合格して初めて試験合格となります。国税庁が公表している「令和4年度(第72回)税理士試験結果」を見ると、5科目すべてに合格した者の割合は2.1%となっています。
合格までの時間
合格までに必要な最低限の時間はどれくらいでしょうか。いくつかのサイトを見比べると「公認会計士試験は2500時間から3500時間、税理士試験は2000時間から4000時間」とするところが多いようです。ただ、中には「どちらも5000時間は必要」とするところもあります。
なお、公認会計士は合格までの年数が平均して2~4年とされています。一方、税理士は2~3年で合格するのはめずらしく、多くは5年以上かかるようです。中には10年以上かけて合格するケースもあります。
違い①業務内容
別の視点からも、公認会計士と税理士の違いを見てみましょう。まずは業務内容です。
公認会計士
公認会計士の独占業務は「監査」です。監査とは、第三者の立場として企業の財務諸表の内容の正しさを確認し、証明することを言います。
会社法などの法令に従って行う法定監査のほか、特別目的の財務諸表の監査など法定外の監査もあります。顧客は上場企業や大企業が中心です。ただ、学校法人や公益法人の財務諸表を監査することもあります。チームで監査業務を進めることが一般的です。
このほか、税理士として登録すれば税理士業務を行うこともできます。
税理士
税理士の独占業務は「税務書類の作成」「税務代理」「税務相談」です。税務書類の作成とは、税務官公署に提出する申告書等を自己の判断に基づいて行うこと、税務代理は税務官公署への申告や税務調査に関する主張や陳述を納税者の代わりに行うこと、税務相談は申告内容や税務調査などについての納税者からの相談に応じることを言います。このほか、記帳代行などを行うこともできます。
顧客は中小企業や個人事業主が中心となります。複数人で業務を行うところがある一方、一人の税理士が単独で業務を行うケースが増えてきました。最近はクラウド会計などで業務が効率化されていることが影響していると見られます。
違い②試験内容
次に試験内容の違いを確認しましょう。
公認会計士試験
公認会計士試験は、いくつかの段階があります。次の通りです。
- 短答式試験
- 試験時期:毎年5月および12月の年2回
- 試験形式:マークシート
- 科目 :財務会計論・管理会計論・会社法・監査論
- 論文式試験
- 試験時期:毎年8月の年1回、3日間実施
- 試験形式:筆記
- 科目 :会計学・監査論・租税法・企業法および選択科目1科目 計5科目
短答式試験に合格しなければ、論文式試験を受験できません。また、短答式試験に合格すると2年間免除されます。また、論文式試験も合格した科目については2年間免除されます。ただし、この期間内に合格しなければ一から受験し直さなくてはなりません。
論文式試験に合格すると、3年以上の実務経験を積み、実務補習を受けて日本公認会計士協会による修了考査に合格してやっと登録する資格を与えられます。
税理士試験
一方、税理士試験は次のようになっています。
- 試験時期:毎年1回、8月上旬に実施
- 試験形式:すべて論述式
- 試験内容:以下の5科目に合格すれば試験合格となる
- 必修科目 :筆記論・財務諸表論(両方とも合格しなくてはならない)
- 選択必修科目:所得税法・法人税法(どちらか最低1科目は合格しなくてはならない。2科目とも合格してもよい)
- 選択科目 :相続税法、消費税法または酒税法、国税徴収法、住民税または事業税、固定資産税から2科目または1科目に合格すればよい。ただし「消費税法と酒税法」「住民税と事業税」という組み合わせについては、どちらか一方しか受験できない。
会計科目と税法科目の2分野から構成されており、その中の5科目に合格すれば試験合格となります。一度合格した科目は永久に有効です。
このほか、税理士として登録するには、会計事務所などで2年以上、実務経験を積まなくてはなりません。
公認会計士と税理士、どちらに向いている?
「会計業界で資格者として働きたい。でも、公認会計士と税理士、どっちがいいんだろう」と悩んでいるかもしれません。実はそれぞれ、適性があります。どんな人がどちらの資格に向いているかの判断基準は次の通りです。
公認会計士に向いている人
公認会計士に向いているのは、次のような人です。
- 生活費を稼ぐ心配がなく、勉強する時間と環境が整っている
- 集中力が高く、短期決戦が性に合う
- 幅広く勉強するのが好きだ
- チームで何かを取り組むのが得意である
- バランス型だと言われる
- 物事を達成するための要領がいい方である
税理士に向いている人
税理士に向いているのは、次のような人です。
- 現在、社会人として仕事をしている
- 勉強する時間が限られている
- 一つのことを深く学ぶのが好きだ
- 中小企業の経営者や個人事業主の課題に取り組みたい
- コツコツと地道に努力するのが得意である
- 職人肌と言われる
まとめ:公認会計士と税理士の違い
公認会計士と税理士の違いを一言でまとめると「公認会計士は大企業中心のチームワーク型、税理士は中小企業中心の職人型」となります。一般に公認会計士は勤務が多く、税理士は独立志向が強い傾向にあります。
ただ、最近は型にはまらない働き方をする人も増えてきました。公認会計士でも税理士登録をして資産税業務を行う人もいます。税理士でも上場企業や大手企業を顧問先にする人もいます。どちらを選ぶかは、自分の適性と経験したい業務から考えるとよいかもしれません。