
税理士がコンサルタントとして活躍するために必要なこととは
税理士に求められる役割は、税務申告や会計処理にとどまらず、経営課題の解決や企業の成長支援といったコンサルティング分野へと広がっています。財務や会計の専門性を武器に、身近な専門家として経営者の相談に応じられるのは、税理士ならではの強みです。
本記事では、税理士がコンサルタントとして強みを発揮できる領域や、活躍するために必要なスキルや資格について解説します。
目次[非表示]
- 1.税理士がコンサルタントとして強みを発揮できる領域
- 2.税理士がコンサルタントとして強みを発揮できる領域
- 2.1.財務コンサルティング
- 2.2.経理コンサルティング
- 2.3.業種特化系コンサルティング
- 3.税理士がコンサルタントとして活躍するために
- 3.1.経営者に信頼されるために必要なスキル
- 3.1.1.ヒアリング能力
- 3.1.2.コミュニケーション能力
- 3.1.3.プレゼンテーション能力
- 3.1.4.専門知識と連携力
- 3.2.コンサルティング業務に関わる資格・学位・認定
- 3.2.1.中小企業診断士
- 3.2.2.MBA(経営学修士)
- 3.2.3.認定経営革新等支援機関
- 3.3.実務経験を積むことが重要
- 4.税務の枠を超えて企業を支える
税理士がコンサルタントとして強みを発揮できる領域
コンサルティングには企業戦略、人事、DX、事業承継など幅広い分野がありますが、ここでは、税理士にとって代表的な3つのコンサルティング領域を紹介します。
税理士がコンサルタントとして強みを発揮できる領域
コンサルティングには企業戦略、人事、DX、事業承継など幅広い分野がありますが、ここでは、税理士にとって代表的な3つのコンサルティング領域を紹介します。
財務コンサルティング
税理士の専門知識を最も活かしやすいコンサルティングです。財務分析をもとに経営課題を明らかにし、その改善策を導き出します。
具体的には、中期経営計画の策定とその実行を支援するMAS(マネジメント・アドバイザリー・サービス)をはじめ、資金調達支援や金融機関との交渉サポート、事業再生やM&Aなど、財務の面から企業の経営基盤を強化します。
経理コンサルティング
効率的かつ不正や間違いの起こらない経理環境を構築するコンサルティングです。なるべく少ない資料で経理ができるよう、口座やクレジットカードなど事業上の支払いを統一するといった基本的な提案から、不正の起こらない経費精算の社内承認体制や、レジや小口現金など現金の管理体制の提案なども行います。また、経理担当者の経験が乏しい場合には、記帳代行でのサポートや、担当者教育を行うこともあります。
近年は、クラウド会計ソフトの導入や、会計システムと他業務システムの連携など、IT知識を活かした経理環境づくりの需要も高まっています。
業種特化系コンサルティング
顧問先からの紹介が重なることで、気がつけば同じ業種のクライアントが増えているというケースは少なくありません。そうして特定の業種との取引が続くと、その業界特有の成長プロセスや課題解決に関するノウハウが蓄積されます。
この流れを活かして、経験の豊富な業種に特化したコンサルティングを独立したサービスとして提供することも可能です。特定業種に焦点を当てて事務所をブランディングすれば、「いつの間にか紹介だけで同業の顧客が安定的に増えるようになった」「業界団体から法改正のたびにセミナーを依頼されるようになった」といった成果につながり、事務所に大きなプラス効果をもたらします。
税理士がコンサルタントとして活躍するために
税理士がコンサルタントとして活躍するためには、税理士としての知識と経験、そして経営者からの信頼が大切です。ここでは、経営者に信頼されるために必要なスキルやおすすめの資格について解説します。
経営者に信頼されるために必要なスキル
顧問先の経営者との信頼関係が構築できていなければ、コンサルタントとしても活躍することは難しいです。ここで紹介するのは基本的な能力ではありますが、整理してポイントを解説しますので参考にしてみてください。
ヒアリング能力
税理士は会計上の数字から企業を客観的に把握することに長けていますが、経営に関しては、経営者や幹部の方が経験豊富であることが少なくありません。そのため、自らの見解を上から押し付けるのではなく、まずは経営者の話を丁寧に聴き、理念や価値観、経営課題とそれに対する経営陣の問題意識を正しく理解することが重要です。
コミュニケーション能力
コンサルティングでは、時に経営者にとって耳の痛い助言をしなければならない場面があります。だからこそ、良き相談相手として日頃から信頼関係を深めることが不可欠です。小さな依頼に素早く対応したり、役立つ情報を先回りして提供したりといった日常的なやり取りが、経営者からの信頼の基盤になります。
プレゼンテーション能力
時には、幹部会議や従業員の集まる場で説明を行うことも必要です。その際には、わかりやすい説明で納得感を与えながら提案内容を実行へと導く力も、コンサルタントには欠かせません。また経営者に伴走しながら計画の実行を支援するプロジェクト推進力も求められます。
専門知識と連携力
経営相談の内容は財務・税務にとどまりません。なかには、M&Aや事業承継、経営戦略、事業再生など、より専門性の高い分野について相談されることもあります。こうした分野に対応するためには、自身で専門知識を身につけるとともに、他の専門家との連携も含め、最適な解決策を提供できる力が求められます。
コンサルティング業務に関わる資格・学位・認定
税理士がコンサルタントとして幅広い相談に対応するためには、経営に関する知識が必要です。資格を取得することは必須ではありませんが、体系的に知識を学び、公的に認められた立場を得る手段として有効です。ここでは、代表的な資格・学位・認定を紹介します。
中小企業診断士
経営コンサルタント分野で唯一の国家資格として、高い信頼性を持ちます。独占業務はないものの、税理士試験では学べない「企業経営理論」「経済学・経済政策」「経営法務」「経営情報システム」など、経営に不可欠な知識を幅広く体系的に学ぶことができます。
MBA(経営学修士)
大学院で経営学を修めた修士号です。マーケティング、人材マネジメントなど経営に関する幅広い知識を網羅的に学べるため、経営の仕組みを体系的に理解したい税理士に適しています。大学院という教育環境で、理論と実務を結びつけながら学ぶことができます。
認定経営革新等支援機関
資格や学位ではありませんが、国の「認定経営革新等支援機関」の認定を受けることも、コンサルティング業務を広げる大きな一歩です。これにより、中小企業から経営改善や資金調達に関する相談を受けやすくなり、さらに金融機関と連携した事業再生支援などの機会も得られます。
実務経験を積むことが重要
コンサルタントとしての実力は、経営者の課題に真正面から向き合い、解決に向けて行動するなかで初めて磨かれていきます。税理士がコンサルタントとして経験を積むには、小規模な事務所よりも、コンサルティング需要の高いコンサルティングファームや大手会計事務所といった環境で働くほうが、より多くのチャンスを得られます。また、独立開業後に自らの事務所経営を改善していく取り組みも、貴重な経験となります。自分自身が実践して成果を出した経験は、経営者への助言に説得力を加える大きな強みとなるでしょう。
このように、税理士が経営コンサルタントとして信頼を得るためには、専門知識だけでなく、現場で積み重ねた実務経験が不可欠です。
税務の枠を超えて企業を支える
本記事では、税理士がコンサルタントとして強みを発揮できる領域や、活躍するために必要なスキル・資格、そして実務経験について解説しました。
経営環境がめまぐるしく変化する今、中小企業の最も身近な専門家である税理士には、税務の枠を超えた支援が求められています。日々の実務を通じて経験を積み重ね、経営者から信頼されるコンサルタントとして活躍の場を広げていきましょう。
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