税理士が独立に失敗するのはなぜ?7つの原因と対処法を解説
税理士が独立した後、失敗することがあります。何が原因となるのでしょうか。また、失敗しないためにはどうしたらいいのでしょうか。この記事では、独立したいけれど失敗が不安な税理士の方に向けて、失敗の原因と対応策をお伝えします。
目次[非表示]
- 1.税理士が独立するときの7つの準備
- 2.税理士が独立で失敗する7つの原因
- 3.税理士が独立で失敗しない7つのコツ
- 3.1.知ってもらう努力をする
- 3.2.相手を理解しようと努める
- 3.3.常に勉強する
- 3.4.キャッシュフローを意識する
- 3.5.「いい人」になりすぎない
- 4.まとめ:失敗から学べばいい
税理士が独立するときの7つの準備
税理士が独立した場合、次のような準備が必要です。
開業手続
もっとも大事なのは開業手続です。具体的には次のような手続きとなります。
- 個人事業の開業・廃業等届出手続き
- 所得税の青色申告承認申請手続
- 青色事業専従者給与に関する届出手続
- 給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出
- 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請
なお2は青色申告をする際に必要です。3と4は独立後、すぐに雇用する場合に必要となります。5は、本来毎月10日に納付すべき給与等の源泉所得税を7月と1月に納付するときに提出します。
この他、税理士は開業税理士としての登録が必要です。この手続きは各税理士会と支部で行います。
資金の準備
独立してすぐに仕事が来るのが理想ですが、なかなかそうはいきません。仕事がなければ売上も立たず、収入もありません。しかし、生活にお金はかかります。
そこで、独立前にある程度、資金を準備しておくことが必要です。この資金準備はコツコツをお金を貯める他、日本政策金融公庫の創業融資などを利用してお金を借りるなどで行います。
初期投資
税理士として独立すると、顧客獲得や業務の遂行のために、いろいろと投資することになります。主に次のようなものが必要です。
- 事務所家賃(敷金・礼金を含む)
- パソコン、プリンター、スキャナ
- 固定電話、スマートフォン
- 税務申告ソフト
- 会計ソフト
- 税務の専門紙
- WEBサイト、名刺
- 机、椅子、本棚などの備品
この他、地方などでは巡回監査などで車が必要となることがあります。
地道な営業
独立後は地道な営業が必要です。独立後すぐに顧客がつくケースでも、営業は欠かせません。顧問契約はいつ解約となるか分からないからです。このため、SNSやブログなどで発信したり、交流会に参加して名刺を配ったりすることが必要です。また、セミナー講師や記事執筆を積極的に引き受けることも営業につながります。
税理士が独立で失敗する7つの原因
税理士が独立した後「うまくいかない」「失敗した」と感じる場面があります。主に次のようなときです。
営業不足
税理士業は税務知識が求められる専門職です。目の前の申告や日々の記帳代行、相談業務をいかに正しく行うかに集中しがちです。また、業界全体として職人肌タイプが多く、営業を苦手と感じる人が少なくありません。結果、WEBサイトやSNSでの発信を行ったり、交流会で他の士業や経営者と知り合ったり…という行動を怠りがちになってしまいます。
仕事は人が持ってきます。人脈を広げたり、名前を知ってもらったりする努力をおろそかにすると、その分、仕事を得るチャンスは減ります。結果、なかなか売上が上がらず、資金繰りに困ることになってしまいます。
価格設定のミス
独立当初は、価格設定を低めに抑える税理士は多くいます。顧客獲得と案件を大量にこなして実績をつくることを目的に考えるからです。それも一つの方法ですが、価格があまりにも低すぎると、税理士側が疲弊し「土日も働くわりには資金に余裕がない」といった状況に陥るおそれがあります。
資金不足
資金は経営の血液です。赤字でも経営は維持できますが、資金が枯渇すると経営は行き詰まります。経営するために必要な諸経費を払えなくなるからです。資金が不足する理由にはいろいろありますが、キャッシュフローを意識せずに使ってしまうことがもっとも影響しやすいかと思います。
税賠リスク
税賠リスクは税理士の独立でもっとも気をつけたいところです。昨今の税制の複雑化で、ちょっとした知識不足や確認不足で顧客に損をさせ、賠償につながることがあります。
リソース不足
独立してしばらくすると、仕事が大量に舞い込むようになります。しかし、ここでリソースを割けないと案件をこなせず、信頼を失うリスクが生じます。クラウド会計や自動仕訳機能の活用、その他ITツールの活用などで効率化を図るか、人材を雇用して業務を安定的にこなせるようにする必要があります。
「自分」を理解していない
事業はすべて自己責任です。すべて自分で決められます。自分にあった事業展開をできればいいのですが、自分を理解していないと違う方向に進んで苦しむことになります。「人が好きか、チームワークが好きか」「営業したい方か、それともデスクワークが好きか」など、あらかじめ自分を理解しておきたいものです。
税理士が独立で失敗しない7つのコツ
税理士として独立した後、失敗しないようにするためにはどうしたらいいのでしょうか。人それぞれノウハウは異なりますが、筆者の目から見て成功している税理士に多い特徴を書いてみました。
知ってもらう努力をする
仕事は人が持ってきます。「自分がどんな仕事をして、何が強みか」を他の人に知ってもらわないと、仕事は増えません。そのため、営業努力は常に必要となります。
「WEBサイトやSNSで積極的に発信する」「交流会で知り合いをたくさん作る」「記事執筆やセミナー講師を引き受ける」「税理士会の会務に手を上げる」などコツコツ行うと、徐々に仕事を紹介されるようになります。
相手を理解しようと努める
顧問先に税制を説明したり、決算の説明をしたりするときは、相手の心情に沿うようにしましょう。そのためには、相手の状況や心理状態を理解しようと努めることが重要です。「忙しい人に長々と説明する」「くわしく知りたい人にざっくり説明する」となると、きらわれるおそれがあります。しかし、相手の立場になり、状況や心情を理解しようとすれば、ベストなコミュニケーションが見えてくるはずです。
常に勉強する
税理士業は税務の専門家です。そのため、勉強は常に怠らないようにしましょう。また、税理士になると研修義務規定があります。毎年度36時間以上、所定の研修を受講するようにしましょう。
また、税務の他、ITツールや営業方法などを勉強しておくと、業務効率化や顧客維持につながるかもしれません。
キャッシュフローを意識する
資金繰り難は、いつ訪れるか分かりません。ただ、日頃、キャッシュフローを意識すれば、ある程度防げます。キャッシュが枯渇してきたな…と感じたら、支出に無駄はないか、また利益率が低すぎないかを見直すようにしましょう。
「いい人」になりすぎない
税理士は基本、世話好きが多いです。「困った人を助けたい」という動機でなる人も少なくないせいかと思います。ただ、いい人になりすぎてしまうと、顧問料や決算料以上にサービスをしてしまったりします。自分を守るためにも、いい人になりすぎないのは大事です。
まとめ:失敗から学べばいい
今回、税理士の独立後の失敗の内容とその対策をお伝えしました。ただ、残念ながら、独立してまったく失敗しない税理士はいないように感じます。大事なのは、二度と同じ失敗をしないことです。失敗を繰り返さないためには、失敗から学ぶことが重要となります。今回お伝えした内容は、転ばぬ先の杖として活用し、仮に失敗しても致命傷にならないよう役立てていただければ幸いです。