
2026年6月末のA-SaaSからfreeeへのシステム統合を前に、「期限の決まった移行プロジェクトを、何から手をつければいいのか」「A-SaaSしか知らない職員たちの不安に、どう向き合えば…」といったお悩みはありませんか?
「職員の90%がA-SaaSしか知らず、集合研修だけではスキルが定着しない」「顧問先への料金説明という、デリケートな問題が待ち構えている」…
今回ご紹介する林竜太郎税理士事務所様は、多くの会計事務所様が抱えるであろう、まさにその状況からfreee活用へと大きく舵を切りました。
その結果、
といった、目覚ましい成果を実現されています。
なぜ逆境を乗り越え、移行を成功させることができたのか?その鍵は「緻密なfreee推進者育成戦略」と「職員と顧問先の双方に向き合う真摯なコミュニケーション」にありました。事務所の規模を問わず、移行のリアルな課題と、それを乗り越えるための具体的なヒントが満載の導入事例です。
土岡様(以下、土岡): もちろん最初は驚きました。しかし、freee会計へ完全に移行する必要があるという状況になり、これはもう「やるしかない」と。期限も決まっていますから、感傷に浸る間もなく、すぐに行動を開始しました。
土岡: 職員の90%が未経験での採用で、彼らにとってはA-SaaSが唯一使ったことのある会計ソフトでした。その状況で全く新しいシステムに移行するわけですから、正直なところどのソフトを選んでも等しく大変だろうと考えました。
その前提に立った時、freeeを選ぶ理由は非常に明確でした。
一つは、A-SaaSからの移行に際して、最も手厚いサポートが受けられるという点です。全くの別システムに自力で移行するよりも、はるかにスムーズに進められるだろうという安心感がありました。
もう一つは、当事務所の強みである「創業支援」との親和性です。ここ10年、当事務所は創業間もないお客様を中心に顧問先を増やしてきました。そうしたお客様の多くは、クラウド会計を活用して自計化を進め、コストを抑えたいというニーズをお持ちです。その点で、クラウド会計のトップランナーであるfreeeは非常に魅力的でした。将来性を見据えた時、この選択が最も合理的だと判断しました。
土岡: freeeがどうこう、というよりは、長年慣れ親しんだA-SaaSが使えなくなることへの戸惑いや不安が大きかったですね。ほぼ全員がA-SaaSしか知らない状態でしたから、当然の反応だったと思います。
土岡: 40人規模の組織で、いきなり全員に新しいシステムを浸透させるのは難しいと考えていました。そこで私たちは、まず所内でfreee導入を牽引するスペシャリストで構成された推進チームを作ることから始めました。
推進チームは合計4名で構成しました。まず、以前からfreeeの使用経験があった私(副所長)ともう1名のスタッフ。それに加え、新たに2名のスタッフがfreeeの提供する導入支援型の育成プログラムに参加し、freeeの担当者による伴走支援のもと、実践的なスキルを習得しました。
この、もともとの経験者とプログラムで育成されたスペシャリストを合わせた4名の推進チーム(freee推進者)がハブとなり、他の職員への横展開を担う体制を構築したのです。
もちろん、全体での研修会や、職員全員分の研修用アカウントを使ったハンズオンも試しました。しかし、スタッフの2割ほどはすぐにキャッチアップできても、大多数は「自分の担当先で困った時に聞ける」という環境がなければ定着しない、という現実に直面しました。
最終的に最も効果的だったのは、やはり育成されたチャンピオンが各職員にマンツーマンで教える「個別フォローアップ」でした。わからないことがあれば、その場で担当のチャンピオンにすぐ聞ける。この体制こそが、職員の不安を解消し、組織全体のスムーズな移行を支えたのだと思います。
土岡: はい。freeeの担当者の方に定期的に更新していただいた進捗管理シート(※アクティブフェーズ)を、全体会議の場で全員に共有したことです。これにより各担当者の進捗状況が常に可視化され、「自分はまだこの件数しか進んでいない」「〇〇さんはもう進んでいるな」と、良い意味での競争意識が生まれました。
※アクティブフェーズ:顧問先の会計ファイルごとに、自動登録ルールの設定状況や、それを用いて登録された取引の件数などを総合的に評価し、業務の効率化度合いを示す指標。
また、職員が行動を起こす具体的なきっかけ作りも重要でした。9月末までにデータ移行完了を目標として設定し、計画的に推進したことで、皆が徐々にペースを上げていきました。2期前のデータが納品された後は、それ以降の年度のデータを自分でCSVインポートするなど、少しずつ触れる機会が増えることで、だんだんとfreeeの操作感で違和感がなくなってきたようです。
そして、「2026年3月決算がA-SaaSを使える最終ラインである」という期限の周知徹底。地道な個別フォローと、こうした進捗の「見える化」、そして実践的な「きっかけ作り」の組み合わせが、40人という組織を動かす上で非常に効果的だったと感じています。これからさらに加速度的に進んでいくのではないかと考えています。

土岡: まず、API連携による自動化の恩恵は絶大です。銀行口座やクレジットカードを連携することで、記帳の手間が大幅に削減されました。A-SaaSにも同様の機能はありますが、設定のしやすさや使い勝手はfreeeの方が圧倒的に優れていると感じます。
土岡: はい。当事務所は3ヶ月に一度、まとめて資料をお預かりするお客様が多く、一度に500枚単位のレシートを処理することも珍しくありません。これまでは手入力するか、枚数が多い場合はfreeeのデータ化サービスに依頼していましたが、ここに大きな効率化の余地があると考えていました。
そこで8月から事務所全体で導入したのがGoogle WorkspaceとGeminiです。まず、お預かりしたレシートをScanSnapでスキャンし、そのデータをGeminiに読み込ませます。運用パターンは2つあり、1つは日付・金額・取引内容を抽出させてfreeeの「明細アップロード」で取り込む方法。もう1つは、勘定科目まで付与した仕訳形式のExcelデータを作成させ、「Excelインポート」する方法です。
特にExcelインポート用のプロンプトは、仕訳まで完成させるため、業種ごとの勘定科目のひな形を基に、一定の基準で科目を自動決定できるよう、別の担当者が工夫して作成してくれています。
土岡: 体感的ですが、100枚程度のレシート処理であれば、手入力と比較して作業時間は5割減になっています。これまでデータ化サービスに頼っていたボリュームの作業を、スピーディーに内製化できるようになったのは大きな進歩です。
freeeさんの方でも、近々、データ化サービスにAIを活用した無料版が追加される予定と聞いているので楽しみにしています。
土岡: まず大前提として、「A-SaaSが利用できなくなるのは、こちらの都合ではなく、誰のせいでもない不可抗力である」という事実を率直にお伝えしています。
その上で、「様々な選択肢を検討した結果、当事務所としては将来性も考えてfreeeを選択しました」という方針を明確にしています。多くの顧問先様はfreeeという名前はご存知ですが、基本的には「事務所の方針なら」とご理解いただけています。
土岡: やはり一番のポイントは料金です。これまでA-SaaSを無料でご利用いただいていたお客様には、今後システム利用料が発生することをお伝えしました。ただ、これも「freeeだから有料になる」のではなく、「どの会計ソフトを選んでも料金は発生します。無料で使えるものはもうなく、今までが特殊だったんです」とご説明しています。
その上で、2026年6月末までは事務所として移行期間中の利用料をサポートするとお伝えすることで、ほとんどのお客様に安心していただいています。現在、自計化されているお客様の2〜3割ほどで説明と移行が完了しており、これからご案内を本格化させていくフェーズです。料金体系の変更にご懸念を示されるお客様もいらっしゃいましたが、最終的には大多数の方にご納得いただけています。
土岡: 私たちもまだ移行の道半ばであり、日々課題に直面しています。ですが、この必須のプロジェクトを乗り越えた先には、必ず新しい事務所の姿が見えてくるはずです。
A-SaaSが使えなくなる以上、どの事務所も何かに変えなければなりません。それならば、API連携やAIとの親和性といった「将来性」を感じるプラットフォームを選択することが、数年後の大きな成長につながると信じています。
最初は大変かもしれませんが、その先にあるメリットは計り知れません。私たちもまだまだ挑戦の途中です。ぜひ、一緒に頑張っていきましょう。

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