【私の開業物語 vol.2】作家などのクリエイターに特化 笑顔の会計士が築く笑顔あふれる会計事務所

田中貴久公認会計士事務所

代表  田中貴久 様

事務所規模:13名
所在地:神奈川県川崎市
課題:開業・独立、業務効率化、組織マネジメント
大学時代に公認会計士を目指すことに決め、大手監査法人などを経て自らの名前を冠した事務所を興した田中貴久さん。いつも笑顔を絶やさないその陽気な性格は、周囲の人を心強い協力者に変える"引力"のようなものを持っています。そんな笑顔の会計士、田中さんの開業物語に迫ります。

弁護士を目指す彼女への対抗意識から公認会計士の道へ

私は愛知県田原市の出身です。自己推薦で合格した早稲田大学に進学するタイミングで上京しました。大学では地学を専攻し、高校の教師を目指していたのですが、当時、付き合っていた法学部の彼女から「あなたには将来が見えない」と言われてフラれてしまったのです。

なにくそと思った私は、彼女が目指していた「弁護士」に匹敵する難関の資格は何だろうと調べた結果、「公認会計士」という選択肢が目に留まりました。彼女を見返してやりたい一心で、公認会計士の勉強を始めたのです。

卒業後は監査法人ビッグ4の一角を占めるEY新日本有限責任監査法人に就職し、働きながら勉強を続けました。そして2011年に晴れて試験に合格し、公認会計士として登録をします。

監査法人では製造業を中心に会計監査に従事。4年目にはNTTドコモの財務部へ出向し、米国会計基準(US-GAAP)や国際会計基準(IFRS)に基づく会計実務や開示業務などを手掛けます。

このNTTドコモでの業務が楽しかったことに加え、人にも恵まれたため、私はいつしか監査法人に戻りたくなくなってしまったのです。実際、出向が終わると監査法人に復帰することなく、独立開業に向けて動き出します。

優れた協力者の存在で、従業員もクライアントも増えていく

NTTドコモでの仕事が終わると、1社の税理士事務所での勤務を経て、2019年の春に自分の名前を冠した田中貴久公認会計士事務所を神奈川・武蔵小杉に開設しました。開業時の顧問先数は10件程度だったと記憶しています。

私は優秀な人間ではありません。謙遜ではなく、本当にそう思っています。事実、税務についても先輩方に比べれば未熟な点も多いことでしょう。ただ、優秀ではない代わりに人に恵まれる星の下に生まれてきたのかも知れません。

というのも、開業して最初に雇ったパートさんがとてつもなく友人の多い人で、それ以降の採用活動をしなくても、この人のネットワークで従業員が次々に見つかるのです。NTTドコモ時代も人に恵まれ、開業しても人に恵まれる。私はつくづく幸運な人間だと思います。

開業するにあたり、まず考えたのが「提供するサービス」についてです。最初のうちは、税務経験の少ない自分にもできる税務リスクの少ない年商規模の小さな顧問先に狙いを絞ったほうが良いだろうと思いました。加えて、1社あたりの依存度が高まる高単価の案件よりも、低単価でも同一業態、同一業種で数多くこなせるもののほうが良いと判断したのです。

また前職の会計事務所でもfreee会計を使っていて、その際、freeeの2名の担当者から後押しされたこともあり、開業時もfreeeを使うことに決めました。

記帳業務はできる限り人に任せたいという思いがあり、開業時から1名のパート従業員を雇用。会計業界の経験のない人でしたが、freeeにはすぐに慣れてもらえました。

私が外に出て営業活動を行い、内部ではパートさんが記帳業務を行う。それを私がチェックする。こうした体制で、私の事務所はスタートしたのです。

営業活動は、少なくとも私にとって不向きではないと感じました。1対1の営業では、上手くいっても効果は限定的ですが、その業種に顔の広い方と懇意になることで、多くの紹介をいただけるようになります。例えば、美容業界なら開業コンサルタントや、店舗什器を扱う業者さんなどが攻略すべき相手と言えます。そうした方々とのパイプを広げることで、お客様の裾野が広がっていきます。

freee会計、freee申告、freeeデータ化サービスを駆使して仕組み化を実現

お客様については先ほど「同一業態、同一業種で数多くこなせるもののほうが良い」と申し上げました。具体的には、弊所は同人作家や商業作家などの個人事業主に特化しています。

この業界にも顔の広い方はいて、その人のお世話になることで弊所のお客様は徐々に増えていきました。すると今度は逆に「今の体制で繁忙期を回せるのか」という不安を抱えるようになり、所内の記帳業務の仕組み化に着手したのです。

例えば新規顧問契約時の確認項目に関しては、どのようなお客様のケースでも、回答にブレがなくなるようにフォームやチェックリストを設けるなどの工夫をしました。

業種を絞っていることで、お客様の取引先や仕入先など、ビジネスの属性も似通ってきます。そのような環境下なので、freee会計に入力する際の勘定科目やタグなどを業種共通で利用できるフォーマットとして細かくルール化できます。業種特化したことがfreeeの強みである自動化を一層、活用できている状態にしていると言えます。

また業種の特性上、仕方のない部分ではありますが、紙で資料をいただくことも多いです。その際はfreeeデータ化サービス(※1)を活用して入力の一部をアウトソースしています。個人事業主がお客様になりますが、1年分の資料をまとめてもらうことを避けて毎月資料をいただくフローを取り入れています。

いただいた資料は、その都度、freeeデータ化サービスにかけ、入力を進めることで繁忙期に極端に業務負荷が大きくならないように心がけています。

申告も「freee申告」で行っています。申告書の作成にあたって必要な情報については、freee申告のステップ型ユーザーインターフェイス(ステップUI、※2)に合わせてお客様への質問フォームを作成し、回収した内容をステップUIに入力するといった工夫もしています。

加えてfreee会計との連動で必要な情報を会計と連携して自動転記をしてくれるので、多くの方の申告作業をこなすのはfreee申告なしでは考えられません。

※1 紙の証憑をデジタルデータに変換し、freee会計などの会計ソフトに自動で取り込むサービス。
※2 ガイドに沿って入力するだけで確定申告を終えられるユーザーインターフェイス。

ステップUIの画面例
freeeの提供するサービスの活用以外にも、顧問先数が増加するにつれ、単に人を増やすだけでなく、業務の見直しを適時、手掛けてきました。その工夫の1つがRPA(Robotic Process Automation:ロボットによる業務の自動化)の導入です。

会計記帳の段階では、回収した資料の格納やfreeeデータ化サービスへの依頼、freee申告への定型的な情報の入力などでRPAを活用することで、人の手を介さず作業が進む体制を構築したのです。

こうしてfreeeをはじめとするツールの助力も得て、パートさんの数を増やしながら、2019年春の開業から数えて5回目の繁忙期を乗り切れるところまで拡大してきたのです。

新人教育も自ら買って出る 事務所を支える自走型のパート従業員たち

今、弊所には私以外に12名の従業員がいます。従業員は皆、パートの女性たちです。お客様が増える度に新たなパートさんを雇い入れ、規模を拡大してきました。外を飛び回る私としては、事務所の内側を固めるパートさんたちに気持ちよく働いてもらうことも重要な仕事の1つになっています。

新しいパートさんが入ると、「ここは皆さんの事務所です。間違えても私が責任を取るのでのびのびと働いてください」と私は伝えます。格好いい言葉を使うと、従業員の自主性を重んじるということになるでしょうか。

開業時からいる古参のパートさんを中心に、皆が自走してくれています。新しいパートさんの教育係も自分たちで買って出てくれますし、私自身が業務改善の提案をもらうこともあります。

この頼もしい人たちと、今後も力を合わせてやっていこうと思っています。ただ、いたずらに商売を広げるつもりはありません。紹介者さんがお客様を紹介してくださる限りは、ありがたく引き受けていくだけです。大々的に事業を展開する力は、もともと私にはないと思っています。

パートさんたちがストレスなく働けるように、時々、スターバックスコーヒーから出前を取ったり、話題のビストロで食事をしてもらったり、私にできるのはそんな些細なねぎらいだけです。

気持ちを込めたコミュニケーションこそ、自身が提供できる最大の価値

同人作家、職業作家専門という今の事務所形態になったのは偶然で、強いこだわりを持ってこの形になったわけではありません。それでもここまで続けて来られたのは、確定申告をした際などに「田中さん、ありがとうございます」という感謝の言葉をいただけるからです。

ベンチャーやスタートアップなど、企業のお客様を受け持ったこともあるのですが、「ありがとう」と言われる機会はなかなかありません。確定申告をするのは税理士の仕事の1つなので、やって当たり前なのです。それだけに、個人のお客様に言われた「ありがとう」には、身体の芯を貫くような喜びがありました。

そんな私には、仕事をするうえで大事にしていることがあります。それは、とにかくお客様には気持ちよくなっていただけるよう、平身低頭を心がけることです。「お客様ファースト」と言い換えることもできます。

例えばお客様から来た連絡については、翌日に持ち越さずにすぐに返事をするようにしています。本当はチャットボットを使おうか考えたこともあるのですが、その選択肢は捨てました。税理士本人から丁寧な返答が来ることが、お客様にとってみれば1つの大きな価値だと思ったからです。お客様には気持ちを込めたコミュニケーションを取り、つながったご縁を大切にすること。それこそが私の仕事における信条です。

                              ◇

2019年の春、自身の名を冠した事務所を開いた田中さん。謙虚で笑顔を絶やさないそのパーソナリティは、多くの人を惹きつけます。田中さん自身は「人に恵まれている」と話しますが、実際には有能な協力者が引力のように田中さんに引き寄せられ、集まってきているのだと感じざるを得ません。そんな"笑顔の会計士"は、神奈川・武蔵小杉の地で、今後も周囲の人を惹きつけながら最前線を走り続けていきます。

田中貴久公認会計士事務所

神奈川県川崎市
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