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会計事務所の事業承継を機に会計のクラウド化を推進。既存の顧問先やスタッフの理解を得ながらfreee会計を浸透させる秘訣とは?
松野浩之公認会計士・税理士事務所
所長 松野浩之 様
事務所規模:10名
所在地:茨城県常総市
課題:業務効率化、付加価値向上
茨城県常総市で三代にわたって続く松野浩之公認会計士・税理士事務所は、二代目から三代目への事業承継を機にfreee会計を導入。先代から引き継いだ顧客との信頼関係を確保しつつfreee会計の導入を進めています。
松野さんはfreee会計を所内と顧問先に浸透させるために、どのような工夫をしたのでしょうか。導入後の変化も併せて伺いました。
先代から続く顧問先との関係性を大切にした誠実な事業運営
――最初に、事務所の紹介をお願いします。
松野 浩之さん(以下、松野):当事務所の所長は私で三代目になります。二代目にあたる義理の叔父が40年以上経営していた会計事務所を、私が2016年に引き継ぎました。
先代は顧問先からの信頼が厚い人でした。なので、お客様と向き合う際には先代が大切に育ててきた顧問先との関係性を継続できるよう、誠実に対応することを心がけています。お客様の多くは年配の経営者なので、丁寧にヒアリングしてニーズを把握するように努めています。
――松野さんの代になってから新たに取り組んでいることはありますか。
松野:私の代になってからは「経理からの価値創出」を念頭に置いて事業運営を進めています。具体的に言うと、会計帳簿を作成して終わりではなく、その帳簿をもとに経営計画のアドバイスや資金調達のご提案などをして付加価値をつけています。最近だと、事業再構築補助金の申請サポートを希望されるお客様が多いですね。
所内では、業務の仕組み化に取り組んでいます。これまでの業務体制では知識の属人化が起きていて非効率であると感じたので、スタッフ間で知識を共有し、相乗効果を生み出して業務効率を上げていこうとしています。仕組み化が進めば、大抵の業務上のミスは防げるはずです。
経営者としてやるべきことは沢山ありますが、個々の業務に追われすぎないよう気をつけなければなりません。常に全体最適の視点に立って事業運営をしていきたいと考えています。
コロナ禍をきっかけにfreee会計の活用を本格化
――松野さんは、事務所を引き継いで間もない頃からfreee会計のアドバイザー制度に登録してくださっていますね。
松野:昔から会計のクラウド化に関心があったので、事務所を引き継いでからすぐにfreee会計のアドバイザー制度に登録しました。ただ、登録してしばらくの間は、今ほどfreee会計を積極的に活用していませんでした。
――なぜ、当時はあまり活用していなかったのでしょうか。
松野:2016年頃は、今ほどクラウド会計ソフトを活用できる環境が整っていなかったからです。
これは個人的な考えですが、インターネットバンキングを使っていないとfreee会計を導入する意味が薄れてしまうと考えていました。当時インターネットバンキングを使っていたお客様はごく少数だったので、インターネットバンキングの利用が一般化するまではfreee会計の本格展開は難しいだろうと判断していました。
――そうした状況からfreee会計を本格活用するように変わったきっかけは何でしょうか。
松野:コロナ禍の影響が大きいですね。通信環境が向上し、インターネットバンキングの利用者が増えたこともありますが、リモートワークで経理業務ができる環境を整えやすくなって、会計業務のクラウド化に踏み切る必要性が一層高まったと思います。
さらにfreee会計自体の使い勝手が年々良くなっていたり、freeeの担当者さんがコーチングしてくださったりしたことも、freee会計を積極的に活用する後押しになりました。担当者さんからは基本的な操作からケース別の活用方法まで、さまざまなことを教えていただき本当に助かりました。
――導入などの不安はなかったのでしょうか?
松野:税理士試験・会計士試験に合格していれば、一定の習熟は図れると思っています。
そのためfreee会計への移行に対する不安もありましたが、クラウド会計に対する好奇心の方が大きかったです。しかしそれでもリスクはあると考えていましたので、導入に伴い発生するリスクは徹底的に排除するように努めています。
ベテランスタッフと顧問先にfreee会計を受け入れてもらうための工夫
――freee会計の活用を本格化するにあたり、スタッフの方からの反応はいかがでしたか。
松野:先代の頃から在籍しているベテランスタッフが多いのですが、想定していたほどの反発はありませんでした。ただ、実際に使いこなせるのかどうか不安には思っていたようでしたね。
――不安を感じているスタッフにfreee会計を使ってもらうために、どんな工夫をしましたか。
松野:新しいやり方を浸透させるためには、スタッフからの理解を得なければなりません。ですから、まずは自分が先陣を切って新しいやり方を実践するように心がけています。
その後、ある程度自分自身で理解をしたら徐々にスタッフに引き継ぐようにしています。その結果スタッフもfreee会計を使い続けるうちに基本的な操作はできるようになっています。初期設定や旧会計ソフトからのデータ移行は引き続き私が実施しますが、いずれはまだ任せていないデータ移行処理や初期設定についてもスタッフに引き継いでいきたいと考えています。操作マニュアルを作成するなどして、スムーズに引き継ぎできるようにしていきたいです。
――顧問先の方々の反応はいかがでしょうか。
松野:50代までの経営者の方にはfreee会計を受け入れていただきやすいと感じています。その理由として考えられるのは、パソコンの使用に対する意識の違いです。パソコンの利用に抵抗がない経営者であれば、「銀行に行かなくても最新の入出金明細をチェックできる」とか「月次推移をリアルタイムで確認できる」といったfreee会計の導入メリットを訴求しやすいです。
逆に、パソコンを使わない年配の経営者の方には、なかなかfreee会計の提案が通りません。そのような顧問先にもしお子さん世代の方がいらっしゃれば、その方にfreee会計を提案することもあります。
――顧問先にfreee会計を提案する際に気をつけていることを教えてください。
松野:決算後の翌期首から導入できるよう、スケジュールを逆算して提案しています。実際にお客様に提案するときは、freee会計の導入によってこれまでの業務フローを変えていただくことを負担に感じるお客様もいらっしゃるようなので、全体で見た時に作業量が減ることが伝わるよう心がけています。
freee会計であればより現実の取引に近い形に
――freee会計を導入してから、どんな変化がありましたか。
松野:会計ソフトへの入力プロセスを 「原始証憑→伝票作成→入力」から「原始証憑→入力」にショートカットできたのはありがたいです。おかげで作業時間が減ってスタッフからも喜んでもらえました。あと、お客様からも 「伝票を書かなくてよいので楽になった」との声をいただいております。
さらに、私自身が会計事務所の経営や顧問先の業務フローの最適化について考える時間が増えました。これは冒頭でお伝えした「経営者として常に全体最適の視点に立って事業運営をしていく」ことに大きな効果を生み出してくれると考えています。
――周囲の方々から好評の声が聞けて嬉しいです。事務所の運営はどのように変わりましたか。
松野:会計処理の方法がより現実の商取引に近づいたと感じています。freee会計の導入前は現金や預金が確定した時点で取引を認識し、仕訳を起こすことが多かったです。しかし、今では取引が発生した段階から顧問先の経営状況を会計に反映させることができ「これこそが本来の会計の姿だ」と痛感しています。さらに、取引を発生のタイミングで処理することで、決算仕訳が劇的に減りましたので、決算処理の早期化にもつながると感じています。
freee会計のメリットは銀行口座との連携だけでなく、未決済取引の消込みの推測機能だと考えています。インストール型の会計ソフトではこれを実現するのは難しいと思うので、クラウド会計を導入しようか迷っている会計事務所の方にはぜひ導入を検討してみてもらいたいですね。
――心強いコメントありがとうございます。最後に、freee会計を効果的に活用するためのコツがありましたら、ぜひ教えてください。
松野:お客様のニーズに応じた運用と提案が重要です。また、自動登録ルールなど、初期設定の段階できちんとルールを作っておくことをお勧めします。自動登録ルールによって起票された仕訳が増えれば増えるほどfreee会計のメリットを実感できるのではないでしょうか。
さらに、せっかくfreee会計を使うのであれば、顧問先の数値を随時把握することにに強くこだわった運用をするべきです。freee会計では未決済取引の登録や決済登録も簡単にできますから、無理なく今まで出来なかったことを実現できるようになると思います。
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