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「会計の非専門家が作ったシステムだからこそ選んだ」業界内で早期にクラウド会計導入を決め、事務所内の工数削減に成功
税理士法人 木下会計事務所
所長 山下寿樹 様(左)
平野賢太郎 様(右)
事務所規模:14名
所在地:東京都江戸川区
課題:業務効率化
江戸川区東葛西で40年以上の歴史を持つ木下会計事務所は、現在2代目の山下寿樹さんが承継されています。先代の頃から先進的な取り組みには積極的で、山下さんもその精神を引き継ぎ、早期にクラウド会計ソフトの導入を検討されました。
ところが、当初はうまくクラウド化できず、苦労されたとか。約3年前に専門担当として平野賢太郎さんが入職されたことを機に、事務所内に浸透。顧問先にも推進できる体制を構築されました。
木下会計事務所がなぜfreee会計を選択し、どのように活用を進めてこられたのか。苦労されたお話も包み隠さずお聞かせいただきました。
20年前から独自の「エクセル出納帳」で効率化・デジタル化を進めていた
――まずは事務所の歴史をお聞かせいただけますでしょうか。
山下寿樹さん(以下、山下):先代は、「お客様に親切丁寧に接する」「立場的に強くない中小企業の方々、個人事業者の方々、納税者の方々の力になる」という創業の精神を持っていました。また、新しいことにチャレンジするのが好きで、会計業界の中では早期にコンピュータを導入。
私が入職した平成8年当時は、5人に1台のパソコンがあるくらいでしたが、その頃からかなり、顧問先でもパソコンを使った自計化を推進していました。どうしたら経理業務を効率化できるか、試算表を簡単に作れるかを常に考えており、弊事務所独自の「エクセル出納帳」を制作。摘要を入力すると自動的に科目がエクセルに入力され、それを会計ソフトに取り込んで仕訳データを作れるツールになっています。
このエクセル出納帳は、エクセルさえあればどの会社でも誰でも使えますし、弊事務所で作ったものなので無料でお客様にお渡しすることができます。その結果お客様に広まり、紙の出納帳はほとんどなくなりましたね。
――20年ほど前に既にデジタル化に取り組まれていたのですね。山下さんは所長を引き継がれて、今後どんな事務所にしていきたいとお考えでしょうか。
山下:一職員として働いていた頃から、所長の基本的な考え方には賛同していましたから、引き継いだ後も基本的には親切丁寧、いかに経理を楽にするかという視点は大事にしています。
ただ、何でも屋になるのではなく、お客様でできることはお客様に行なっていただき、他の専門家がやるべきことは他の専門家に任せ、「私たちでないとできないこと」を提供していこうという意識は強めています。
――平野さんが木下会計事務所に入職された理由をお聞かせいただけますでしょうか。
平野賢太郎さん(以下、平野):大きく3つあります。1つ目は、シンプルに会計事務の専門知識とスキルを身に付けたかったこと。2つ目は、中小企業の会社の仕組みを知りたかったこと。3つ目が、木下会計事務所の求人に「クラウド会計freeeを導入しています」という記載があったことですね。
――クラウド会計を謳っている会計事務所は、当時あまりなかったのでしょうか。
平野:4年前の江戸川区では、ほぼなかったと思います。求人を見て「この会計事務所は進んでいるな」という印象を受けました。
お客様からクラウドツールの活用方法を教えてもらった
――事務所として解決しないといけないと思われているテーマはありますか。
山下:DXを進めていきたいです。というのも、日本は他国に比べて生産性が低いと言われる中、遅ればせながら大企業はDXを進め始めていますが、中小企業はまだまだ昔のままのやり方の会社が多いですし、自力でDXを進めるのはまず無理。そう考えたときに、会計事務所こそ中小零細企業を支援していくべきではないかと思いました。
私たちはバックオフィスにITを導入して、簡単なところからDXを進めていくことを「スモールDX」と呼んで推進していっています。木下会計事務所は、会計事務所の中では進んでいる方かもしれませんが、世の中全体で見たらそんなに進んでいるわけではないので、弊事務所とお客様の両方で、スモールDXを進めていこうと思っています。
――「スモールDX」とは具体的にどのようなことに取り組まれているのでしょうか。
山下:基本的には紙の資料は止めて、クラウドストレージを使って共有したり、コミュニケーションは、メールや電話をチャットツールに置き換えたりしています。
――DXの大事さや、やるべき理由はほとんどの人がなんとなく感じていると思いますが、実行できている企業は多くないと思います。木下会計事務所がそこに踏み出せた理由をお聞きできれば幸いです。
山下:お客様の中にITリテラシーが高いスタートアップ企業がいたことがあり、私どもは恥ずかしながらそのお客様からクラウドツールをいろいろと教えてもらい、慣れていった部分はあります。ただ最大の理由は、平野くんが来てくれたことです。平野くんがいなかったら今のようにはなっていないと思います。
当初は、きっかけさえ作ればクラウド化は進むと考えていたが……
――最終的にfreeeを導入された一番の理由は何だったのでしょうか。
山下:私がfreeeを導入しようと思ったのは、会計の専門家ではない方が作ったシステムだからです。専門家が作った会計システムは、会計のプロではない方々にとっては使いづらい面がありましたから、専門知識がなくても作業できるfreeeを導入しようと思ったのです。
平野:私は、freeeがまだ上場していないタイミングでサービスを見て、APIをしっかり公開しているし、触ってみて「面白い、今後伸びそうだ」と感じました。なので、そもそもfreeeを扱っているところで仕事をしたいと思っていました。
――freeeの伸びしろにかけていただきありがとうございます。導入に際して懸念はありましたか。
山下:事務所の職員がついてきてくれるかどうかが不安でした。実は、平野くんが入る2年ほど前から、クラウド会計をやろうと思っていたのですが、その2年間ではほとんど進まなかったのです。ツールを提示してきっかけを作れば、事務所としてそちらの方向に動いていくと考えていたのですが、認識が甘かったです。
――そこで導入を諦めなかったのはなぜですか。
山下:クラウドの流れが来ることは間違いないと思ったので、諦める気はなかったですね。1つ言えるのは、私のように年齢が高い所長だと、引っ張っていくのは大変だということです。
実は私は会計事務所に来る前にSEをしていたので、freee導入の際も勉強すればわかるだろうと思っていました。ですが、私自身が思ったよりも錆びついてしまっていて、あまり対応できなかったのです。ですので、比較的若手で、freeeの良さをわかって推進できる人を探して雇うなり、協力体制を作るなりした方が早いと思います。
――freeeに慣れてもらうために、事務所として工夫されたことはありますでしょうか。
平野:最初に「freee使ってください」と丸投げすると挫折しやすいので、私のようなfreeeの専門家をまず作ることですね。
その専門家が導入から軌道に乗せるところまで1人で全部やる。そして軌道に乗ったところで初めて別の人に触ってもらう。すると、やることが明確で迷いなく操作することができます。そうやって慣れていけば、自然に対応できるようになると思います。
専任担当者が動きやすく、現場の協力が得られやすい体制づくりの極意
――推進していく中で大事なのは、平野さんのような専任担当者がやりやすい形を作ることだと思いますが、事務所としてのバックアップ体制はいかがでしたか。
平野:ある程度、自由にやらせてもらえたことが大きかったです。
私は比較的周りを巻き込むのが得意ですが、困ったときに山下さんから従業員の方に伝えてくれることもあり、助かっています。ただ、基本的にはトップダウンで言うより、私のように下の立場から「みんなで一緒にやりましょうよ」と伝えるスタンスで築いていきました。
――会計業界の経験で言えば先輩にあたる方々に「一緒にやろう」と伝える際、気を付けたことはありますか。
平野:「尊敬しています」ということは伝えつつ、今後こういう風に変わっていくんだという話をしています。泥臭いですが、一緒に食事に行って仲良くなり、いざというときに助けてもらえる体制づくりも意識していますね。
私は会計業界の経験が浅いのですが、逆に皆さんはITにそこまで詳しくないので、IT面では私を頼ってくれます。そういう場面で丁寧にサポートしていくことで、私からの働きかけにも呼応してくれるようになってきたのかなと思います。
――顧問先の理解を深めていくためのポイントや、「変えるのが面倒だからこのままでいい」といった方に対してはどのように提案されるのかお聞かせいただけますでしょうか。
山下:事務所としては、変えたくないとおっしゃる方に対しては、無理やり変えようとはしません。
基本的にはお客様のやり方を尊重します。ただ、私の本音としては、そのままでは時代に取り残されてしまうことになるので、「本当に大丈夫なのかな」とすごく心配に思いますね。
商取引の流れを理解していれば、活用に抵抗はなくなる
――弊社のコンテンツで意思決定の後押しになったものはありますでしょうか。
平野:「アドバイザーガイド」は最初の頃かなり読みましたし、今でも困ったら検索しています。freeeを始めたとき、会計の勉強と並行して学習していったのですが、それが逆に良かったなと感じています。
――それはなぜでしょうか。
平野:会社の商取引の流れを1つひとつ確認しながら学んでいけたからです。流れを知った上で、今までの会計システムとfreeeを比べてみると、freeeの方が商取引の流れに沿っている、理にかなったシステムだと感じました。会計知識はもちろんあった方がいいですが、商取引の流れを知っていれば知識量関係なく使えるなと。
逆に会計知識のある職員の方であっても、商取引の流れを理解せず、データを仕訳として入れるものという断片的な捉え方をしていると、freeeは使いにくいと思います。
――freee会計を実際に活用する中で不満な点はありますでしょうか。
平野:タグの使い方や遷移数が多いこと、文字が小さいことなど、細かいところでいろいろありますね。
ただ、通帳連携やAPI連携ができ、クラウドなのでテレワークでも簡単にスピーディーにできるので、インストール型と比較してfreeeが劣る点は見当たりません。
――freee活用で、これだけは押さえておいた方がいいところは何だと思われますか。
平野:最も重要なのは、自分の事務所で試してみることです。最初はアドバイザーガイドをとにかく全部見ることをおすすめします。
あとは、きちんとテストを受けること。そこから使えるか使えないかを判断してもらえればいいと思います。また、freeeに関わる人たちにいろいろ聞いてみるのもいいですね。
属人的な業務は減り、ベテラン職員が抜けた穴を埋めることもできた
――freeeを導入後、経営上の変化として感じられたところをお聞かせください。
山下:まだ変革の最中ですので、目に見えて効率化された部分はまだ少ないです。ただ、従業員が自分の顧問先を積極的に切り替えて、freeeの良さを活かしていこうという動きが出てきているので、そこはすごく良かったなと思っています。また、やはりクラウド化によって紙が減り、私自身、探し物をする時間がなくなりました。事務所全体で効率化を図れているのではないかと感じます。
平野:私もそう思います。事務所内の経理はすでに効率化されてきました。今まで3人で作っていた請求書が、1人で素早く作れるようになりましたし、今まで紙で管理していて、事務の方が2人がかりで転記作業をしていた売掛台帳もfreeeによって工数が削減されました。
――そのあたりの変化は、事前に想像できていたことでしたか。
山下:期待はしていましたね。特に1年前、長年にわたり総務・経理をすべて任せていた職員が定年退職したのですが、平野くんがクラウドツールを使ってきちんと組み立ててくれたおかげで、その職員が抜けた穴を最小限の苦労で埋めることができました。これはすごく大きかったです。
――クラウド化を検討されている会計事務所、経営者に対して、伝えたいことはありますでしょうか。
山下:世界全体のクラウド化の流れは止まらないので、早くクラウド化するに越したことはないと思います。時代が進み、「クラウド化もできていない会計事務所さんには任せられない」とお客様に思われてしまってはもう遅い。
私たちは先ほど申し上げたように「自分の事務所よりもお客様の方がITに詳しかった」という経験があったので、会計事務所としてはクラウド化できないと厳しい時代になっていると強く思います。
――担当者目線で平野さんはいかがでしょうか。
平野:「所長から言われたから」ではなく、「自分がやりたいから」という動機があるかどうかは重要です。
私であれば、木下会計事務所を江戸川区、東京で一番ITが進んでいる会計事務所にしたいと考えています。そういう軸となる想いがあれば、最初のうちは理解してもらうことが大変でも、続けていくことでついてきてもらえるようになると思います。
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