
Compathy様がfreee会計への移行を決断した背景には、従来の会計業界に対する問題意識と、A-SaaSのサービス終了という時代の大きな転換点がありました。
疋田様(以下、疋田): freeeや他社サービス含め、クラウド会計は使っていないとまずいという問題意識は前提として持っていたのですが、A-SaaSがfreeeに吸収されたことが移行の決定打となりました。
従来の会計ソフトは、専門知識がある者にとっては入力が容易であると感じられます。しかし、お客様にとっては、通帳のデータ読み取りや領収書アップロードができるfreeeの方が操作しやすいという時代になってきているのです 。会計ソフトを選ぶ基準は、会計事務所の都合ではなく、お客さんが使いやすいかどうかであるべきだと考えています。
移行の決定後、Compathy様が直面したのは、従来の作業に慣れた職員と顧問先双方の「心理的な負荷」、そしてfreeeを活かすための「業務設計」の難しさという課題でした。
疋田: インターネットバンキングの登録やデータ取り込みといった作業は、従来の伝票入力に慣れた者にとってはすべてが壁だと感じられます。従来の業務と並行して新たな仕組みを導入しなければならないため、心理的な負荷が最も大きかったです。
山下様(以下、山下): 長年行ってきた処理の仕方と、クラウド会計で目指す『業務設計』をどうしたらよいかという不安が大きかったです。これが便利になるなという期待感よりも、『どうしよう』という不安の方が当初は強かったのが実情です。
大福様(以下、大福): お客様がタグ(補助科目)を多用しようとする傾向がありましたが、『あくまでタグはその時々でつけていいものではない』ということを伝えるのに苦労しました 。タグの目的が明確でなければ、結局従来の補助科目と同じで、集計時に混乱してしまいます。
Compathy様は、freeeが従来の会計ソフトとは仕組みや考え方が根本的に異なることを理解し、お客様一社一社に合わせた「業務設計」を積極的に行いました。
1.ITスキルに合わせたマニュアル作成と「使わない提案」
山下: 特にITスキルが高くないお客様に対しては、『この取引はここから入力してください』と、具体的に指定してあげないと、うまく回らないことが分かりました。
また、多機能であるfreeeだからこそ、「あえて使わない」という選択肢も提案しました。
大福:全ての機能を余すところなく使う必要はないので、『お客様の負担になる機能は、あえて使わなくてもいいですよ』というのを意識し始めてから、説明がしやすくなりました 。お客様にとっての『楽』を追求するという視点に立つことが重要です。
freeeへの移行は、Compathy様が「税務申告」の枠を超え、「経営のお困りごと」に深く踏み込むきっかけとなりました。
疋田: freeeだとできる機能の範囲が広いので、業務設計に踏み込んでやってしまえば、お客様も『非常に楽になった』と感じてくれます 。そこまで介入しないと、従来の会計ソフトと変わらないのにコストだけが増えた、という印象になりかねません。
山下: 人件費が高くなり、経理担当者を一人にするといった時代において、我々会計事務所がfreeeを活用し、『その業務の一部を社長がやらなくていい状態』を作る支援ができるようになりました。これは、経営体制の最適化に貢献できていると考えています。
freee導入後の具体的な成果として、顧問先・事務所双方で、特に紙資料の削減と月次決算の早期化が顕著に現れました。
A-SaaSからfreee会計への移行は、労力と時間を要しますが、それは会計事務所が提供する価値を高めるための必須の投資だとCompathy様は考えます。
山下: freeeは単に会計ソフトとして記帳や申告を行うだけでなく、お客様の経営状況を把握した上で業務を『設計』して使っていくことができるツールです 。そういう付加価値の高い提案ができ、お客様に喜ばれる機能が備わっています。
大福: freeeは会計事務所に寄り添ったアップデートが増えています。だからこそ、一歩踏み込んで、このソフトはどのような構造になっているのか、というのを自ら知ることが重要です。適宜情報を汲み取りながら進んでいっていただけると、移行は必ず可能です。
疋田: 結局、お客さんが選ぶのです 。我々が「合わせにくい、合わせやすい」という視点を変えなければ、会計事務所として生き残っていけません。クラウド会計の考え方を勉強しておくべきだという強い思いがあります。ぜひ、その本質的な部分を見て、移行を進めてほしいと思います。
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